[コラム]2021.3.4

「日本の麦酒歴史」YouTubeで公開中。製作者の重富寛さんに映画への思いを聞く

広島で「ビールスタンド重富」を営業している麦酒伝道師の重富寛さん。スイングカランと呼ばれるビールサーバーから注ぐ彼のビールを求めて、日本中から人が集まる人気のお店です。そんな重富さんが自らの資金を投入して日本で初めてと言われるビール映画を製作したことをご存じでしょうか。

その名は「日本の麦酒歴史(ビールヒストリー)」。

「開拓使麦酒醸造所」にまつわるエピソードを重富さんがゆかりの地を周りながら語る映画です。

2021年2月3日には、YouTube「ビールチャンネル」で無料公開を開始。すでにご覧になった方もいらっしゃると思います。今回は、重富さんに「日本の麦酒歴史」への思いを聞いてみました。

日本のビールを盛り上げるために、今一度原点に立ち返る必要があると思った

「ビール離れと言われるようになって随分と時間が経ちました。私自身もビールを提供する身ですが、なかなか突破口が見つけられていません」

ビールの美味しさ、楽しさを多くの人に知ってほしいと思い、ビールを提供している重富さん。お酒の多様化や飲酒人口の減少からビールの魅力を知る人が減少していく流れを変えたいと思っていました。

「福沢諭吉の著書『西洋衣食住』の中には、ビールは麦でできた酒で苦みがあるが、胸の内を明かすことができると書かれています。こんなに素晴らしい効果がある飲みものなのにお酒を交わし合う機会も減ってしまっています」

業界が暗中模索する中、重富さんは1冊の本に出会います。元ヱビスビール記念館館長の端田晶さんが書いた「ぷはっとうまい日本のビール面白ヒストリー 」(小学館)です。

「競合する会社が一体となって日本のビールを盛り上げていく過程を読んで、ビールが次のステージへレベルアップするためには、今一度原点に立ち返る必要があると思いました

日本のビールの歴史は、ヨーロッパと比べると短いです。今なら遡って見つめ直すことができます。もう1度、日本人にとって『ビールとは何か?』を紐解いて伝えたくて『ぷはっとうまい日本のビール面白ヒストリー』を元に映像で伝えることにしました」

原点に立ち返る上で、映画の舞台として選んだのが「開拓使麦酒醸造所(現 サッポロビール株式会社)」です。

「日本人が自分たちの手で醸造所からビール造りまでつくり上げ、日本の国を豊かにするためにつくった醸造所ということで取り上げることにしました」

撮影で何度も足を運んだ北海道。「開拓使麦酒醸造所」が中心の舞台となっているため、北海道だけでも色々な地域を巡った。【日本の麦酒歴史より】

トラブル続出! 1年の完成予定が2年に

映画を撮影すると決めた重富さんですが、映画の撮影は1人では行えません。しかし、重富さんには強力な味方がいました。当時、映画大学に通っていた娘さんです。娘さんが監督、娘さんの友人がカメラマンを担当して撮影が始まりました。

台本も重富さん自身が作成。ロケハンも自分でこなしました。【日本の麦酒歴史より】

冒頭にも記しましたが、「日本の麦酒歴史」は自費製作です。映画は、札幌から鹿児島と広い地域で撮影を行われています。そのため、「多くの費用がかかりました」と重富さん。

資金の負担を減らすため、クラウドファンディングの利用は考えなかったのでしょうか。

「お金を集めるのに時間がかかり製作が遅れてしまうと思いました。それにクラウドファンディングは、自分のためではなく世のためになるものに使うべきだと考えています」と今回の映画製作での利用は考えなかったと言います。

撮影は、2017年3月下旬からお店の営業や講演会と忙しい時間の合間でスケジュールを確保して開始。しかし、慣れない撮影準備は「思った以上に大変でした」と振り返ります。

「今回の映画では、『開拓使麦酒醸造所』の名前が出てきます。何か問題があるとサッポロビールさんにも迷惑がかかってしまいます。撮影場所の許可や台本作成など大変でした。特に撮影手続きは、時間との闘いでとても疲れました」

サッポロビール博物館での撮影シーン。【日本の麦酒歴史より】

「日本の麦酒歴史」では、語り部としても出演。台詞を覚え、演技もします。「台詞はしょっちゅう間違えて監督に怒られましたね。1つのシーンで、何回も時間の許す限り撮り直しました」。

撮影期間は合計で約14日間。当初、北海道の撮影は1回で終える予定でしたが、機材トラブルで数回、北海道へ行って撮影することに。「この旅費は痛かったですね」と苦笑いをしながら話してくれました。

日本で野生ホップが発見された地、岩内町でも撮影を行った。【日本の麦酒歴史より】

完成後の内容確認もスムーズにいきませんでした。原作者である端田さんを含めたサッポロビールの関係者にチェックをしてもらうため、本社がある恵比寿を訪れます。ここで、大変な問題が発生します。

「一部、史実と異なる場面がありました。しかし、スケジュールや費用の関係で撮り直すことができません。監督と相談して、アフレコで吹き替えて対応することにしました。しかし、口の動きに合わせて話すことは経験ありません。どうしていいか考えていたら監督から『最後が合えば形になる』と言われ、何とか修正しました」

こうして1年で完成させる予定の映画製作は、2年の月日をかけて完成しました。

サッポロビール博物館の貴賓室での1シーン。どんな内容なのかは視聴してみてください。【日本の麦酒歴史より】

映画を通じてビールが飲めない人にもビールの魅力を感じてほしい

製作期間が延びたことで、上映時期も変更。しかも、その最中に新型コロナの感染が拡大して上映会をすることができなくなってしまいました。

ところが重富さんはコロナ禍にYouTubeで公開できて良かったと言います。

「この時間ができたことで、ビールを伝える時間に充てることができました。YouTubeを通じて、映画のことはもちろん、ビールの楽しさを伝えることができています」

映画を観てもらえればビールが心を通じさせる飲みものであることがわかると話します。

「映画を通じてビールが飲めない人にもビールを楽しむ場や時間の良さを体感してもらえると信じています。良さを理解してくれる人を増やしていくことで、ビール業界は次のステップに上がれると信じています」

映画の中で描かれている人間模様を知ることで、ビールがただのお酒ではないことを知ることできます。たとえ飲めなくても、その世界観に惹かれると思います。

2021年2月3日の上映会後はライブ配信も実施。こちらもYouTubeで視聴可能。【Beer Channelより】

最後にビールファンにメッセージをいただきました。

「当店には日本中から『美味しいビールが飲める』とお客様がいらっしゃいます。だけど特別なことは一切していません。普通のことを当たり前にやっているだけです。『普通のビール』を日本中どこでも飲めるように提供する場を増やしていきたいです。

ビールは共に過ごす人たちの時間を楽しく豊かにしてくれます。ビールを飲んだ方たちから『楽しかった』と言ってもらえる場を提供してビールを広めていきたいです。それが実現できるようにビールの管理やビールサーバーの洗浄を当たり前に実施する人や場を増やす活動を続けていきます」

麦酒伝道師として邁進する重富さん。新型コロナの感染が落ち着いたら、「ビールスタンド重富」にビールを飲みに行ってみてはいかがでしょうか。そして、飲みに行ったら映画の感想を伝えてみてください。

映画は、以下のリンクから視聴することができます。まだ観ていない方、ぜひご覧ください。

日本の麦酒歴史(ビールヒストリー)

裏話満載「日本の麦酒歴史」のエピソードはこちら

麦酒伝道師 重富寛 note

新型コロナウイルスが収束したら広島で乾杯しましょう!【画像提供/重富寛さん】

Special Thanks 楯 優作

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住所:〒730-0022 広島県広島市中区銀山町10−12

電話:050-3635-4147

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ビールスタンド重富日本の麦酒歴史重富寛
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この記事を書いたひと

こぐねえ(木暮 亮)

ビールコンシェルジュ/ビアジャーナリスト

『日本にも美味しいビールがたくさんある!』をモットーに応援活動を行っている。実際に現地へ足を運び、ビールの味だけではなく、ブルワーのビールへの想いを聴き、伝えている。飲んだ日本のビールは4000種類以上(もう数え切れません)。また、ビールイベントにてブルワリーのサポート活動にも積極的に参加し、ジャーナリストの立場以外からもビール業界を応援している。

当HPにて、「ブルワリーレポート」「うちの逸品いかがですか?」「Beerに惹かれたものたち」「ビール誕生秘話」「飲める!買える!酒屋さんを巡って」などを連載中。

●音声配信アプリstand.fmで、ビアジャーナリストこぐねえのビールRADIOを配信中
Apple PodcastSpotifyでも聞けます。

【メディア出演】
<TV>
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<ラジオ>
●TBSラジオ「鈴木聖奈LIFE LAB~○○のおじ様たち~」
●JAPAN FM NETWORK系列「OH!HAPPY MORNING」
<雑誌>
●週刊プレイボーイ(2019年2月11日号) ●DIME(2019年4月号)●GetNavi(2020年2月号) ●週刊朝日(2020年6月12日増大号)●食楽(2020 SUMMER No,116)●週刊プレイボーイ(2020年12月28日号)週刊大衆(2021年4月19日号)週刊大衆(2021年7月12日号)BRUTUS(944号 2021年8月15日号)
<Web>
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