[ブルワー]2021.3.23

「SORACHI1984」3年目にかける思いをブリューイングデザイナー新井健司さんに聞く

サッポロビール株式会社が開発した伝説のホップ「ソラチエース」を100%使用したビール「サッポロ SORACHI1984(以下、SORACHI1984)」。2021年4月9日で発売から3年目となります。

それに先立ち2021年3月製造分より、2020年同様に国産ソラチエースの使用比率を増やしたリニューアルをしました。キャッチコピーも「ホップへのプライド。」「このビールは、世界を変えるかもしれない。」に加え、「ビールを飲むのではない、ソラチを飲むのだ。」「北海道、空知から世界へ。」を新たに追加。新たな目標に向かって走り始めます。

国産ソラチエース100%で造る「SORACHI1984」を目標に掲げるブリューイングデザイナーの新井健司さんは、新しいキャッチコピーにどんな想いを込めたのでしょうか。お話を聞きました。

ホップを意識して飲んでほしい。だから「ビールを飲むのではない、ソラチを飲むのだ。」なんです

――:「SORACHI1984」も3年目をむかえます。今回のリニューアルでは、キャッチコピーも変更しました。まずはここからお聞きしたいと思います。

新井:ビールは麦のお酒です。つまり麦が主役です。しかし、「SORACHI1984」は伝説のホップ「ソラチエース」が肝のビールです。あえて、ビールという枠から飛び出したいと考えから「ビールを飲むのではない、ソラチを飲むのだ。」と打ち出しました。

――:麦がなければ成立しないのがビールです。しかし、ビールに個性を与える重要な役割がホップにはあると思います。

新井:そうですね。「SORACHI1984」もドイツのビール純粋令にも則って麦芽とホップだけで造った正統派ビールです。この正統派ビールに「ソラチエース」は個性をもたらしてくれています。ホップは今までのビールのイメージを変えてくれる存在だと考えています。

――:ビールのイメージを変えてくれる存在……。

新井:ビールのスタイルは100種類以上あって毎年増えていますが、「SORACHI1984」はビールスタイルありきで造ったビールではありません。「ソラチエース」を思う存分楽しんでほしい想いでつくりました。

――:敢えてビールのスタイルに当てはめるならゴールデンエールだと発売当初より仰っていました。

新井:そうです。「ソラチエース」を際立たせる味を考えてつくったら、たまたまゴールデンエールというスタイルに当てはまるビールになりました。なので、聞かれたらゴールデンエールと答えています。

――:あくまでも「ソラチエース」ありきのビールということですね。

新井:そのことも踏まえて、「ビールではなく、ソラチを飲んでほしい。」 想いを強く打ち出すことにしました。

「ビールを飲むのではない。ソラチを飲むのだ。」のキャッチコピーが描かれたポスター。【画像提供/サッポロビール株式会社】

世界でも人気の「ソラチエース」。その始まりが北海道だということを知ってほしい

――:もう1つのキャッチコピー「北海道、空知から世界へ。」についての想いを教えてください。

新井:ご存じの方も多いと思いますが、「ソラチエース」は北海道で生まれたホップです。1984年に品種登録されましたが、当時の日本のビールシーンに合わず陽の目を浴びることはありませんでした。

――:1994年にアメリカに渡りましたが、そこでもしばらく注目されませんでした。

新井:そうなんですよね。2002年にダレン・ガメシュさんに見出されてアメリカのクラフトビールで人気が出るまで注目されることはありませんでした。

――:その後、世界的に人気のホップになって、2019年に生みの親であるのサッポロビールから「SORACHI1984」が発売されました。

新井:先に世界から飛び出したホップですが、その元祖は北海道です。やっぱり北海道の地から誕生したホップ「ソラチエース」を日本の人に知ってほしい想いが強くありました。だから「SORACHI1984」は、「ソラチエース」だけを使って造りました。

――:シングルホップビールなので、「ソラチエース」の特徴がわかりやすいビールです。

新井:レモングラスやヒノキなど「ソラチエース」特有の香りを感じやすいと思います。

――:「ソラチエース」の良さが1番わかるビールが「SORACHI1984」だということですね。

新井:そうです。日本で生まれたホップを使った「SORACHI1984」だからこそ世界に打って出て、世界のビールシーンを変えていきたい。その強い決意を込めて「北海道、空知から世界へ。」をもう1つのキャッチコピーにしました。

「北海道、空知から世界へ。」のキャッチコピーが描かれたポスター。【画像提供/サッポロビール株式会社】

国産ソラチエースの使用比率を増やして、大きなブランドへ成長させたい

――:今回のリニューアルでは、さらに上富良野産で栽培されているソラチエースの使用比率を増やしました。

新井:先ほどもお話しました通り、ソラチエースの元祖は北海道です。それを日本や世界にアピールするためには、単に「ソラチエース」を使うだけでは不十分だと思っています。北海道で育てられた「ソラチエース」にこだわりたいと思っています。

――:たしかに海外産「ソラチエース」では、説得力が弱くなってしまいます。

新井:まだまだ先は長いですが、すべて北海道上富良野産「ソラチエース」を使った「SORACH1984」を目指して2020年から栽培量も増やす試みも始まりました。

――:2021年から収穫を開始して、2022年には450kgの収穫を目指すとありました。

新井:自然が相手なので、こちらの都合通りにはいかないかもしれません。だけど「ソラチエース」は、様々な逆境を乗り越えてここまできました。きっと100%北海道上富良野産「ソラチエース」を使った「SORACH1984」を皆さんに飲んでもらえる日がくると信じています。

――:その日に向けて「SORACHI1984」の認知度も上げていきたいですね。

新井:そうですね(笑)。

――:今日はありがとうございました。最後にお知らせなどはありますか?

新井:2021年からブランドパーソナリティとして「冒険家」を打ち出していきます。わくわくするような冒険の旅を歩むブランドにしていきます。

――:冒険家ですか?

新井:そうです。ワクワクするようなことを提供して、多くの仲間をつくっていくブランドを目標に成長をしていきます。ぜひ、引き続き一緒に旅を楽しんでください。

ソラチエースの軌跡をまとめた動画はこちらから

新デザインになった4缶パック。【画像提供/サッポロビール株式会社】

サッポロ SORACHI1984 商品概要

品目:ビール

アルコール分:5.5%

発売日・地域:2021年3月製造分より順次切替・全国

パッケージ:350ml缶・樽10L

デザイン:4缶スリーブに、「ソラチエース」が北海道で生まれ世界へ羽ばたいていったホップであるというストーリーと、これから、「サッポロ SORACHI1984」をさらに大きなブランドに成長させていく決意を表現しました。

中味特長:

・ヒノキやレモングラスのような香りを独自のドライホッピング製法(※)で引き出した軽やかなゴールデンエール。

・爽快さの中にもおいしさの余韻も感じられる、これぞ日本のビールという凛とした味わい。

※通常、仕込工程で添加するホップを発酵工程でも添加する製法。この製法により、ホップの香り成分をよりダイレクトに引き出すことができる。

参考小売価格:350ml缶:243円(税抜) 樽:オープン価格

SORACHI1984ブランドサイト

SORACHI1984サッポロビール 株式会社新井健司

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

こぐねえ(木暮 亮)

ビールコンシェルジュ

『日本にも美味しいビールがたくさんある!』をモットーに応援活動を行っている。実際に現地へ足を運び、ビールの味だけではなく、ブルワーのビールへの想いを聴き、伝えている。飲んだ日本のビールは4000種類以上(もう数え切れません)。また、ビールイベントにてブルワリーのサポート活動にも積極的に参加し、ジャーナリストの立場以外からもビール業界を応援している。

当HPにて、「ブルワリーレポート」「うちの逸品いかがですか?」「Beerに惹かれたものたち」「ビール誕生秘話」「飲める!買える!酒屋さんを巡って」などを連載中。

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