一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会

イベント

【ビールを飲んで、ビールを読む】-Fuji to Hood 2026で見えた25の「日本」

ビールは、人と人をどこまで近づけることができるのだろうか。

その答えを探すように、2026年7月、オレゴン州ポートランドで開催された「Fuji to Hood(F2H)」にボランティアとして参加しました。日本とオレゴン州のブルワリーがペアを組み、一杯のビールをともに醸すこのイベントは、単なるビアフェスではありません。会場で汗を流し、ブルワーやボランティアと時間を共有した後、帰宅して公式資料を読み解くことで、当日見えていなかったもう一つのF2Hが浮かび上がりました。そこにあったのは、25組のブルワーが描いた25通りの「日本」だった。

ボランティアだから見えた現場


朝から気温が上がりそうな快晴だった。ボランティアと一般入場者の受付時間が重なり、私はしばらく”待ちンボ”状態。主催者によれば前売りチケット2000枚以上当日券含めた来場者数は3000人だったそうです。専用グラスを持った人々の長い列ができて、ビール注ぎスタッフはひたすら注ぎ続ける状態。和食を中心にしたフードブースも多数あり、季節柄日系人のお祭りのようでした。リサイクル意識も高いポートランド、リサイクル用回収容器もあっという間に満杯。回遊魚のように会場をクルクル回っていました。ビールはボラ終了までお預け。自身の水分補給もしなければならないのですが、それどころではなく、見るにみかねたある方がペットボトルのほうじ茶をこっそりくれました。色は似てるけど、やっぱビールがいい。そう思いながらも一気飲みしてしまった。
夕方ようやくボラ終了。いざビールブースへ。幾つかは既に売り切れとなっていましたが、知り合った方たちとお疲れの乾杯。労を労ってもらい、頑張った自分!を感じました。
イベント終わりかけに日本側のオーガナイザーとようやく話すことができた。彼は、アメリカに惚れ、アメリカのビールを好きになった一人でした。その情熱は、多くの仲間との出会いを生みながら交流を続けてきていました。

Fuji to Hoodが醸す日米交流の意味と価値


F2Hは、日本とオレゴン州のクラフトビール文化を結ぶ国際コラボレーションフェスティバルで、2018年にポートランドでスタートしました。日本では「Hood to Fuji(H2F)」として開催。現在はポートランドと日本で交互開催され、両国のブルワリーやサイダリーがペアを組み、それぞれの技術やアイデア、日本の食材などを取り入れたコラボビールやサイダーを醸造します。このイベントの魅力は日本食や日本酒、音楽、伝統芸能、アート、クラフト工芸など、日本文化を幅広く紹介する文化交流イベントとしても発展を続けていること。その根底にあるのは、「ビールや食を囲めば、人は自然と胸襟を開き、文化や国境を越えた友情が生まれる」という理念です。今年は、25組の日米ブルワリー・サイダリーが参加し、クラフトビールを媒介に、新たな味覚と文化の出会いを生み出しています。このコラボで求められるのは最低1種類の日本の素材を加えること。

資料編:2026年コラボブルワリーと日本の素材

今年のF2Hでは、麹、山椒、かぼす、キンモクセイ、日本産杉、酒粕、味噌など、日本ならではの素材がオレゴンのブルワーたちによって自由な発想で表現されました。以下に今年のコラボレーションの概要を資料としてまとめてみました。

<コラボリスト>

Away Days Brewing x Black Tide
Baerlic Brewing x Groundtap Brewing
Bauman’s Cider x Himitsu Beer
Binary Brewing x Repubrew
Block 15 Brewing x Y. Market Brewing
Boneyard Beer x Ise Kadoya Brewery
Breakside Brewing x Yoho Brewing
Buoy Beer x Baeren Beer
ColdFire Brewing x Spring Valley Brewing
Deschutes Brewery x Minoh Beer
Fort George Brewing x West Coast Brewing
Gigantic Brewing x Uchu Brewing
Heater Allen Brewing x Heiwa Craft Brewing
Hopworks Brewery x Fukuoka Craft
Level Beer x Fujizakuara Kogen
Little Beast Brewing x Kyoto Brewing
Little Hop Brewing x Yokohama Beer
Migration Brewing x Shonan Beer
Obelisk Beer x OK, Adam Hard Cider
Portland Cider Co. x Son of the Smith Hard Cider
Ruse Brewing x Namachan Brewing
SteepleJack Beer x Harvest Moon
Threshold Brewing x Teenage Brewing
Von Ebert Brewing x Totopia Brewery
Wolves & People Farmhouse Brewery x North Island Beer

<日本の素材とコラボブルワリー一覧>

そば(Soba Noodles) → Away Days Brewing × Black Tide Brewing
抹茶(Matcha)→ Binary Brewing × Repubrew
麹(Koji) → Block 15 Brewing × Y. Market Brewing
かぼす(Kabosu) → Boneyard Beer × Ise Kadoya Brewery
麹・甘酒(Watermelon Amazake)→ Breakside Brewing × Yoho Brewing
Murakami Seven ホップ → ColdFire Brewing × Spring Valley Brewing
麹(Koji Rice) → Deschutes Brewery × Minoh Beer
日本産杉(Japanese Cedar)→ Gigantic Brewing × Uchu Brewing
日本産杉(Japanese Cedar)→ Heater Allen Brewing × Heiwa Craft Brewing
カボス(Kabosu)→ Hopworks Brewery × Fukuoka Craft
キンモクセイ(Osmanthus Flowers)→ Little Beast Brewing × Kyoto Brewing
山椒(Sansho Pepper)→ Ruse Brewing × Namachan Brewing
温州みかん → Baerlic Brewing × Groundtap Brewing
キンカン → Bauman’s Cider × Himitsu Beer
ひとめぼれ米・野田塩・白ごま→ Buoy Beer × Baeren Beer
米 → Fort George Brewing × West Coast Brewing
山梨県産緑茶 → Level Beer × Fujizakura Kogen
日本酒 → Little Hop Brewing × Yokohama Beer
柚子・日本酒 → Migration Brewing × Shonan Beer
酒粕 → Threshold Brewing × Teenage Brewing
八丁味噌 → Von Ebert Brewing × Totopia Brewery
公式掲載情報をもとに、日本の素材と使用ブルワリーを整理

考察と締め


会場を走り回っていたので、25種類すべてを飲むことはできませんでした。しかし帰宅後、どのブルワリーがどんな日本の素材を選んだのかを一つひとつ調べていくうちに、当日見えていなかったもう一つのF2Hが見えてきました。

甘酒を含めた麹が3組もあった。かつては日本=抹茶、最近ではペーストも売られている柚子だったのですが。2026年は麹だった。つまりオレゴンのブルワーは、もはや「日本らしい味」ではなくて「日本の発酵技術」に興味を持ち始めているということではないでしょうか?クラフトビール文化としてかなり興味深い。資料を整理して改めて気付いたのは、日本を表現する方法が25通りあったこと。麹を選んだブルワリーもあれば、杉や山椒、八丁味噌を選んだブルワリーもある。どれ一つとして同じ”日本”はありませんでした。F2Hは、日本の素材を紹介するイベントではなく、それぞれのブルワーが思い描く「日本」をビールで表現する場だったのです。

クラフトビールは、レシピを共有する文化ではなく、文化そのものを共有する営みかもしれません。

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

お問い合わせはこちら

この記事を書いたひと
アバター画像

この記事を書いたひと

美穂子

ビアジャーナリスト/トラベルライター

サンフランシスコ在住。現地旅行会社でインバウンドツアーの企画・コーディネート。カンファレンス・イベントスタッフとして国内飛び回ってます。旅行書籍の現地リサーチも手がけ、出張時のブルワリー巡りが仕事楽しみ。地球の歩き方カリフォルニア特派員として毎週三面記事を投稿中。他方、糀食品製造にも携わっています。

日本フードコーディネーター協会認定フードコーディネーター、栄養士、調理師、米国レストランマネージャー(SarvSafe®️)。

趣味:アメリカンアンティーク収集。街歩き。スポーツ観戦。歴史探訪。