一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会

100名近い国内ブルワーなどが大集結 !!「Hop & Brew School®」日本初開催レポート

2026年8月4日(火)、「Hop & Brew School®」が日本で初開催となった。参加したのは、全国の64企業(ブルワーおよび商社)の96名だ。会場となった東京・恵比寿の「YEBISU BREWERY TOKYO(ヱビスブルワリートーキョー)」に続々と集まり始めると、久しぶりに顔を合わせたブルワー同士が交わす挨拶の声があちこちで聞こえ、会場の期待と熱はぐんぐんと上がっていった。

当日参加した100名近い参加者とともに

初上陸!「Hop & Brew School®」とは?

「Hop & Brew School®」は、2004年にワシントン州ヤキマでHopunion(現在のYakima Chief Hops)が立ち上げた教育プログラムで、ホップ収穫期にブルワーとホップ生産者をつなぐイベントとしてスタートした。現在は、世界的な一大プロジェクトへと進化し、世界各国からの参加や、ホップの官能評価体験や選定についてのパネルディスカッション、サステナビリティに関する議論や新たなホップ製品に関する技術セミナーなど、多岐にわたるカリキュラムを学ぶことができる。また、参加型イベントの他にも、「Hop & Brew School Podcast」といった専用のメディアプロジェクトを立ち上げるなど、さらに国際的に展開している。

これまでにアメリカ国内での開催はもちろん、ヨーロッパでの海外開催を経て、今回、Yakima Chief Hopsからサッポロビール株式会社に日本初開催の提案があり、サッポロビール株式会社と片岡物産株式会社が共催する形で実現となった。

Yakima Chief Hops(ヤキマ・チーフ・ホップス)
世界のホップ生産は、ドイツとアメリカで約80%を占めている(※)。そのアメリカにおいて、ワシントン州ヤキマは同国内最大のホップ産地であり、Yakima Chief Hopsは、世界中の醸造家に最高品質のホップを栽培・加工・供給することに尽力する、家族経営の農家による100%生産者所有の共同体
※出典:The barthhaas Report HOPS 2024-2025

当日のプログラムと概略紹介

およそ3時間にわたるプログラムは、以下の盛りだくさんな内容で構成された。
◆ ホップ生産者パネルディスカッション
◆ サッポロビールと国産ホップの歴史とこれから
◆ ホップ製品セミナー
◆ Rahr BSGによるモルト(麦芽)紹介
◆ ホップ官能評価入門(Hop Sensory 101、ホップの香りや風味を評価するための基礎講座)
◆ Mock Hop Selection(醸造家が行うホップ選定を体験する模擬セッション)
◆ (閉会後)ハッピーアワー&ネットワーキング交流会

Yakima Chief HopsのChief of Customer Service, Bryan Pierce氏による開会挨拶を皮切りに、ホップ生産者であるBrian Zielinski氏(Scenic Valley Farms、Oregon)Brent McGlashen氏(Mac Hops、New Zealand)によるパネルディスカッションでそれぞれの活動などが紹介された。

Yakima Chief Hops、Chief of Customer Service Bryan Pierce氏



◆ Scenic Valley Farms
→約485ヘクタールの広さの農場は、6月から10月中旬までのシーズン中に、ニンニク、牧草種子、小麦、アカツメクサ、洋梨、カボチャ、ヘーゼルナッツ、ワイン用ブドウ、そして、ホップと、多岐にわたる作物を栽培。オレゴン州のホップ農場の約80%がサーモン・セーフ認証を取得しており、これは環境への責任に対する業界の取り組みを裏付けるもので、そういった土壌の健全性を重視した運営のもと、10年近くにわたりYakima Chief Hop向けにホップを栽培。シムコー(Simcoe®)、シトラ(Citra®)、クラッシュ(Krush®)といった品種を手掛けていることなどが説明された。
◆ Mac Hops
→ニュージーランドで125年にわたるホップ栽培の歴史を持つ家族経営農場では、課題ととらえる世界的なホップの供給過多、人件費や燃料費などの高騰などへの対策を行なっている。そのための、年間エネルギー需要の8ヶ月分を賄う太陽光発電の導入、また、ホップの乾燥には木質チップを利用で、同農場は世界で最も炭素効率の高いホップ農場の一つであることを紹介した。また、醸造家に対し、必要なホップ量の約85%を1年前に、60%を2年前に、そして40%を3年前に契約しておくことを推奨し、醸造計画やホップの需要についての醸造家と生産者がオープンなコミュニケーション維持の重要性を訴えている。

そして、楯 優作 氏(サッポロビール株式会社購買部ホップ調達担当)による、サッポロビールと国産ホップの歴史と今後の展開が紹介された。

営業、広報などを経て2025年4月より米国・欧州・日本エリアのホップ買付担当として活動中の楯 優作氏


→世界のホップ生産量の中での日本の位置付けと、1960年代をピークに国産ホップ生産量は減少し、少子高齢化が生産者の課題などを紹介。また、50年以上の育種研究を続け
るサッポロビールは、現在、農林水産省で登録されている国産ホップ28種類中20種類を開発し、またホップに限らず大麦も育種する世界でも稀な存在であること、そして、2025年には国産ホップの外販もスタートし、また、2030年までに世界的な課題である気候変動に強い新品種の登録・出願を目指すことや、うどんこ病耐性ホップの開発も2026年7月に発表し、量産化・普及に向けて取り組んでいる活動についても取り上げた。

次に、Tommy Yancone 氏(Product Development Manager、Yakima Chief Hops)によるホップオイル製品の紹介が続いた。

製品開発マネージャーとして、5ヘクタール規模のトレリス(ホップ栽培棚)システムや温室、ドライホッピングの適用を検証するスプリットバッチ実験用発酵槽の運用など、多岐にわたる研究開発活動に携わってきた Tommy Yancone 氏


→革新的なホップオイル製品として、HyperBoostDynaboostが紹介された。
HyperBoostは、CO2抽出プロセスから得られる高オイル含有量の製品をベースとした高濃度のホップオイル製品。T90ペレットの約100倍の濃度(オイル含有量40〜70%)を誇り、主にドライホッピング用途に設計されている。HyperBoostは低粘度の注ぎやすさやT90ペレット由来の苦味や質感をある程度維持することでのドライホップ添加での活用などを推奨し、また発酵の初期段階で添加も可能であること。また、Dynaboostは、HyperBoostと高アルファ酸ホップエキスをブレンドした製品で、ワールプールでの使用を想定して設計されている。T90ペレットと比較して約10倍の濃度と約20%のオイル含有量を持ち、苦味とアロマのバランスが取れていることで、風味への悪影響なしにワールプールで100%使用することが可能など、これらの製品の使用に関する推奨方法や使用のメリットなども示された。

さらに、Ashton Lewis氏(International Technical Account Manager、RahrBSG)による現代のホップ主導型スタイルの礎となる淡色北米産モルトの紹介プレゼンテーションが続いた。

1847年にビール醸造および製麦会社として設立し、現在は製麦事業に特化している Ashton Lewis 氏


→日本を含む世界各地でクラフトビール市場が成熟する中、消費者の間では、色調が淡く、風味の強さが控えめで、すっきりと飲みやすいビールを好む傾向が強まっており、現代は、モルトがキャンバスとなり、淡色ビールを造るための低色度、ホップの風味を引き立てるクリーンで繊細なモルト風味、ドライなビールに仕上げるための高い発酵性、副原料の使用に対応できる強力な酵素力、安定した品質と使いやすさ、そして単一温度でのインフュージョン・マッシング(糖化)への適性を備えたモルトが求められていることを述べ、そのニーズに適う製品として「Brewer Standard 2.0」、そしてより淡い色調のモルトを求める顧客の要望に応える「North Star Pils(ノーススター・ピルス)」が紹介された。

Mock Hop Selection:ホップ官能評価入門(Hop Sensory 101

Yakima Chief Hopsでは、完成したビールの風味に対するブルワーそれぞれの独自の好みに応じ、カスタマイズされた個別的な体験を提供している。その選定プロセスは通常、9月の収穫期に行われ、時期によって異なる品種が対象となっている。その実施方法の紹介のあと、時間制限の中でホップの香りや風味を評価する方法を実体験することで、実際にホップの選択や買い付けを行う際に、如何にスムーズで的確に特徴を掴み、判断して選択する実践的な体験が行われた。

番号のみのサンプリングのホップから感じる香りを入力

参加者の入力データがワードクラウド(※1)で表示される


その表示から、それがどんな特徴を持ったホップであるのか、また、自身の感じたアロマが共通認識なのか、もっと他にも感じ取れる特徴があったのか、などをわかりやすく知ることができる内容で、それを数パターン体験することができた。
※1 単語の出現頻度によりその単語のフォントの大きさが変わり、よく使われている単語ほど大きく表示するなどによって、重要なキーワードやテーマを一目で把握できる

ホップ選定擬似体験スタート


蓋付き容器に入った3つの異なるモザイク・ホップのT90ロットが用意され、参加者を2つの主要グループに分け、サンプルを評価する方法で実施。参加者は、開始前に案内用のQRコードを読み取り、ホップのサンプル1つにつき約1分間をかけて評価を行った。

体験用に用意されたMosaic HOP3種のサンプル


参加者の体験風景

閉会後はイベントのために造られたスペシャルビールで交流

ホップの最新情報や体験プログラムをじっくりと学んだ後は、2種のビール「Foggy ale」「Hop study : West coast pilsner」が振る舞われ、たっぷりの料理とともに楽しみながら、参加者同士の交流の場が設けられた。

主催やプレゼンターが勢揃いした閉会挨拶


2種のビールを味わう参加の皆様


「Foggy ale」 -Yakima Chief Hops x YEBISU-
 Alc.6% 小麦麦芽一部使用、Amalliro®、Mosaic®一部使用、無ろ過
”Beer is uncertainty(ビールは不確かなもの)”
ビール開発は無数のビアスタイルが漂う霧の中から一つの答えを出す作業であるというコンセプトのもと、ヱビスブランドChief Experience Brewerの有友亮太氏が自らアメリカのホップ畑を訪れて採用した「Amalliro®」「Mosaic®」を採用し、より香りと味わいの品質を高めることに挑戦したビール

「Hop study : West coast pilsner」 -HOP BREW SCHOOL x ISEKADO x YEBISU-
 Alc.4.5% Simcoe®、Mosaic®、Krush®、Krush®CRYO® 一部使用
ホップに関する取り組みをきっかけに「ISEKADO(伊勢角屋麦酒)」と「YEBISU BREWERY TOKYO」がコラボして誕生したウエストコーストピルスナー。
ISEKADOのBEYOND THE PACIFICでも採用される、Yakima Chief Hopsのアメリカンホップ「Krush®」(※2)とYEBISU BREWERY TOKYOがフラッグシップに使用するヱビスのルーツ「ヱビス酵母」による発酵で、織りなす鮮烈でフルーティな豊かな香りを楽しめるビール
※2 マンゴー等トロピカルフルーツ系のアロマが特徴のホップ

<ブルワーコメント>
有限会社二軒茶屋餅角屋本店 ISEKADO CTO 山宮 拓馬 氏
ヱビス酵母はラガー酵母なのに、仕込んでみると想定をはるかに超えるエステル香(フルーティな香り)が立ち上がりました。当初イメージしていたものとは違う要素も生まれ、この予想外こそ共同醸造の醍醐味です。セミナーに参加した国内のブルワー、主催のYakima Chief Hopsの皆さんにも楽しんでいただけました。
プレスリリース:ISEKADO、YEBISU BREWERY TOKYOと限定ビールを共同開発(有限会社二軒茶屋餅角屋本店 2026年8月14日 10時00分発信より)
サッポロビール株式会社 ビール&RTD事業部 ヱビスブランド Chief Experience Brewer 有友 亮太 氏
Yakima Chief HopsをきっかけにISEKADOさんとつながり、YEBISU BREWERY TOKYOで初めてブルワリーとコラボレーションしたビールを開発できました。
多くの醸造家の皆様にも飲んでいただけて、私自身も非常に学びの多い機会になりました。

サッポロビール株式会社 有友 氏

参加者および主催者の声

RePuBrew合同会社 アシスタントブルワー 湯浅 豊史 氏
「サンプルとなったホップ自体はこれまでも使ってきたものですが、そのホップをロット違いで嗅ぎ分ける体験ができたことがとても面白かったです。普段はやはり経験則などからこのホップはこの香り、といった先入観もあり、送られてきた同じロットのものをそのまま使用しつつ、今回は当たりだったとか、そうでもなかったとかという形で受け止めていました。また、今回の体験では、これだけの人数の方と一緒にビジュアルで結果を知ることができ、そしてレーダーチャートで示されることで、自分の感じたものの共通点や、そのホップが持つ気が付かなかった側面を発見することができたりと、とても刺激を感じる機会でした」

RePuBrew合同会社 湯浅 氏

キリンホールディングス株式会社 調達部 Jiayi Fu(Joey)氏
「私は、ホップの調達を担当して2年目で、ヨーロッパやオセアニアなどに買い付けに行っています。これまでにもホップセレクションの体験はありますが、やはり、その時に感じたことを言語にして合わせること、また、文化の違う人同士での感じ方の違いを理解して判断する必要性など、そういった機会を何度も持つ”訓練”の大事さを、この機会で改めて感じることができました」

キリンホールディングス株式会社 Jiayi Fu(Joey)氏(右)

GORA BREWERY(株式会社ダイニング)醸造長 戸高 秀哉 氏
「ホップオイルはうちのブルワリーではすでに使用はしていますが、製品によっては揮発性の高さなどいろいろな特徴があるため、安全性やコスト面も含めて色々と情報収集した上で、必要に応じて導入も検討すべきと考えています。なので、こういった勉強会で情報収集できるのは、とても良い機会だったと思います」
横浜ベイブルーイング株式会社 醸造士 下澤 優樹 氏
「自分自身はブルワーになってまだ1年弱でアメリカには行ったことがなく、アメリカの業界情報を知る良い機会になりました。たとえば、ホップオイルに関する製品情報や、官能の際の言語を合わせることの必要性など、アメリカでのやり方などを知ることができたのもとても興味深かったです」

GORA BREWERY(株式会社ダイニング) 戸高 様(左)、横浜ベイブルーイング株式会社 下澤 様(右)

サッポロビール株式会社 購買部ホップ調達担当 楯 優作 氏
「ホップを起点にして、約100名の醸造家が会社の垣根を超えてYEBISU BREWERY TOKYOに集えたことを大変うれしく思います。日本のビール業界全体の活性化につながることを願っています」

サッポロビール株式会社 楯 氏

「Hop & Brew School® Satellite: Japan」開催概要

■名称:Hop & Brew School® Japan
■日時:2026年8月4日(火)17:00〜20:00(交流会20:00〜21:00)
■場所:YEBISU BREWERY TOKYO
■主催:Yakima Chief Hops
■共催:サッポロビール株式会社片岡物産株式会社

熱心に話を聞く、総勢100名近い参加の方々

当日の参加者に渡された、オリジナルのキャップと風呂敷、ステッカー

Hop & Brew SchoolMac HopsRahrBSGScenic Valley FarmsYakima Chief HopsYEBISU BREWERY TOKYOサッポロビール片岡物産

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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宮原 佐研子

ビアジャーナリスト/ライター

ビアLover 宮原佐研子です。 ビールの大好きなトコロは、がぶがぶ飲める、喉ごし最高、大人の苦味、世界中でも昼間でも飲める、 果てしなくいろんな味わいがある、そしてぷはぁ〜っとなれる、コトです。
ライターとして、書籍『全国203ブルワリー集合!ビアEXPO公式本 日本のクラフトビール巡り』/書籍『園田智子のテッパンおつまみ』/雑誌『ビール王国』(ワイン王国)/『じゃらん酒旅BOOK』(リクルート)/『うまいビールの教科書』(宝島社)/『クラフトビールの図鑑』(マイナビ) など