【ビールを通して感じる韓国㊲】ソウルとその近郊でクラフトビールを飲む(10) Craft Han’s & MysterLee Brewing@孔徳
行くたびに、目まぐるしい勢いで新しい観光スポットが誕生し、アップデートを続けている韓国・ソウル。一昔前まで小規模な工場や商店が建ち並んでいた地域が、再開発により雰囲気が一変し、人気のスポットとして注目を集めるようになっていることも多いです。
ソウルで気になるタップルームを追って初めての地域に行ってみると、新しい高層ビルの一角だったり、新たに人が集まる観光地になっていたりという経験は何度もしています。
建物が新しくなり、人々が集まってきて賑やかになるのは悪いことではありませんが、特にソウルの中心部では生活の匂いが感じられなくなってしまった場所も増え、寂しさを感じることもあります。
ところが今回初訪問した孔徳(공덕・Gongdeok・コンドク)駅周辺は、そんな変わりゆくソウルとはちょっと違った雰囲気が残っていました。
孔徳駅とその周辺
孔徳駅はソウル中心部の西側に位置し、ソウル地下鉄5号線・6号線に加えて、国際空港と直結する空港鉄道も乗り入れています。私も今まで地下鉄の乗り換えでは何度か利用したことがありましたが、あくまで乗換駅というイメージでした。

駅の近くには観光客の利用する大きなホテルが何軒もあるとも聞いていたので新しいビルが建ち並んでいる繫華街をイメージして初めて外に出てみると、駅の近くには高層ビルは多いものの意外と落ち着いた雰囲気を感じました。見えていた建物が新しすぎなかったこともあると思います。

実は駅の周辺は以前から会社が集まるオフィス街になっていて、東京に例えると神田や新橋といったところでしょうか。そして、大通りを少し入ったところには、そこで働く人々御用達の食事処や市場があります。
オフィスビルの裏手には少し前に建てられたようなマンションもあり、ほどよく地元の雰囲気が感じられました。

周辺に特に有名な観光名所がなく観光客にはあまり知られていなくても、実は地元の人々には愛されている地域でした。
Craft Han’s
今回、孔徳へ行こうと思った理由のひとつは、Craft Han’sというタップルームがあることを知ったからです。Craft Han’sはかつて梨泰院にもあり、10年ほど前に私が韓国のクラフトビールを知るきっかけになり、何度か通ったところです。
梨泰院では、ナイトクラブやバーなどが多い繁華街という場所柄もあって18時からの営業でしたが、今回見つけたタップルームは11時半から開いていました。
梨泰院については…
【ビールを通して感じる韓国⑩】ソウルとその近郊でクラフトビールを飲む(5) 聖地でクラフトビールを飲む@梨泰院周辺(2023.9.28)
で記事にして、私が通っていたころのCraft Han’sの写真も載せています。
この記事を書いた2023年にCraft Han’sにも寄ったのですが、かつての建物は残っていたものの営業が確認できない状態でした
孔徳駅の8番出口を出て徒歩で5分弱。Craft Han’sに着いたのは12時の少し前で、店内には4人のサラリーマン風の先客が一組いました。

店内は意外と広くて明るい感じでしたが、木材が多く使われており、かつての梨泰院のタップルームに近い素朴な雰囲気を感じました。

店内に入ると「フードは30分ぐらいかかってしまう」と言われてしまいましたが、ビールは普通に提供できるとのことだったので飲んでいくことにしました。
注文はタブレットからになります。日本語にも切り替えができるようにはなっていましたが、「カート」「呼び出し」「注文履歴」というところのみで、ビールの説明は韓国語か英語のみでした。

ビールは樽生で9種類つながっていました。まずは、フォレストトレイルヴァイツェン(6500ウォン・約720円)を注文しました。アルコール分は5%で穏やかな味わいのヴァイツェンが、かつての梨泰院のCraft Han’sのビールの味わいを思い出させてくれました。

ソウルのタップルームでは珍しく出てきた無料のおつまみは、ポテトチップスではなくポテトクッキーでした。

2杯目はアルコール分4.5%のマンゴーペールエール。7900ウォン(約870円)でした。マンゴーの味わいを程よく感じられる、とてもバランスのいいビールでした。

お客さんは次から次へと来店するのですが、見ていると誰もビールを注文していません。どうも他のお店で食事をしてきた後に、コーヒー系の飲み物を飲んでゆっくりと話をしているようです。コーヒーメニューは10種類以上あり3500ウォン~4500ウォン(約390円~500円)とリーズナブルでした。
タップルームに入るまではオフィス街でお昼からタップルームを開けているのはランチのためかなと思い、入ったらフードに時間がかかると言われてわからなくなっていたのですが、昼はソフトドリンク中心の営業ということでオフィス街でも需要があるのだと納得しました。
夜になると雰囲気が全然違ってくると思うので、次回があれば夜の様子も確認できたらと思います。
◎Craft Han’s麻浦店(크래프트한스 마포점)
所在地:179-12 Dohwa-dong, Mapo-gu, Seoul
営業時間:11:30~27:00(日曜:~26:30)
MysterLee Brewing
次に向かったのは、同じ孔徳駅ですがCraft Han’sから見ると大通りの反対側にある1番出口から徒歩5分ほどのMysterLee Brewing。2017年開業のブルワリーで名前は聞いたことがありましたが、飲むのは初めてです。
こちら側は緑地も広がっていて、先ほどの街並みとはまた違った雰囲気がありました。

奥に見えるビルがMysterLee Brewingのあるオフィスビルです。

タップルームは1階で、ガラス張りで明るい雰囲気でした。ちなみに同じビルの地下1階はサラリーマン御用達のレストラン街になっていて、ごちゃごちゃしていて地上とはまったく雰囲気が違いました。
13時の開店とほぼ同時に、MysterLee Brewingのタップルームに入りました。


外から見たときは目の前が駐車場なのにテラス席?と思ったのですが、高さがあり意外と車は視界に入らないようです。暑い日中だったので使いたいとは思いませんでしたが、いい気候の時ならば悪くないかもしれません。

こちらも注文はタブレットからです。

ビールは自社ビールが樽生で11種類つながっているほかに、缶での提供やゲストビールもありました
7900ウォン(約870円)のペールエールを注文。アルコール分は5.3%です。

先ほどのCraft Han’sでフードを食べなかったので、ラペコールドパスタも注文しました。21000ウォン(約2320円)でした。お値段は高めでしたが、サーモンやナッツがふんだんに入ったひんやりとして美味しいパスタでした。

店内にいるうちに何組かお客さんがきましたが、ラフな格好をしている方が多く、近くで仕事をしている方の利用という感じではありませんでした。観光客が来るような場所でもないのに平日でも13時という開店時間は行く前から少し不思議で、実際に訪問して客層を眺めてみても、その理由ははっきりとはわからないままでした。
でも理由はともかく、昼過ぎから飲めるのはありがたかったです。
◎MysterLee Brewing(미스터리브루잉)
所在地:311 Dongmak-ro, Mapo-gu, Seoul
営業時間:13:00~23:00
観光名所はほとんどありませんが、それだけに落ち着いた雰囲気が残り、庶民的で美味しいものも食べられる孔徳駅周辺。今回訪問したところ以外にもタップルームはあるので、クラフトビール好きにもとても楽しめるところです。
でも、目まぐるしい勢いで変化をしているソウルの中でいつまで今のような姿が残るのかはわかりません。興味がある方は、なるべく早めの訪問をお勧めします。
*参考文献:「CRAFT BEER KOREA(KOREAN CRAFT BREWERY GUIDE BOOK)」(2020)BEER POST PUBLISHING
*100ウォンを約11円として換算しています
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。







