10周年の〈山崎原酒樽熟成〉。サントリー「マスターズドリーム」が追い続ける“醸造家の夢”
ビールに愛された皆さまへ。
サントリー「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム〈原酒樽熟成〉」シリーズが、2026年で誕生10周年を迎えました。
その節目となる今年、11月10日(火)から数量限定で発売されるのが、「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム〈山崎原酒樽熟成〉2026」です。
10月7日に開催された「ものづくりセミナー」では、マスターズドリームが誕生するまでの歴史から、通常のビールではなかなか行われない製法、そして山崎蒸溜所のウイスキー原酒に使用した樽でビールを熟成させる〈原酒樽熟成〉シリーズについて、マーケティング担当者と醸造家から詳しい説明を聞くことができました。

サントリー㈱マーケティング本部 ビール・RTD部課長 大津 亮 氏

サントリー㈱ビール開発生産本部 ビール商品開発研究部 開発主幹 浅野 翔 氏
そこから見えてきたのは、単に「プレミアムなビール」をつくるのではなく、「ビールでどこまで行けるのか」を追い続けてきたサントリーの姿でした。
目次
約10年をかけて生まれた「醸造家の夢」
マスターズドリームの開発が始まったのは2006年。
目指したのは、効率や生産性を優先するのではなく、素材や製法に徹底的にこだわり、ただ「うまいビール」を追求することでした。
いわば、醸造家が「本当に造りたいビール」を形にするプロジェクトです。
その開発期間はおよそ10年。2015年、ついに「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム」が誕生しました。
現在のマスターズドリームが掲げる味わいの言葉は、
「多重奏で、濃密。」

パッケージデザインにもなっている、書道家・武田双雲さんの「夢」
口に含んだ瞬間のスムーズな立ち上がりから、柔らかな苦味、奥深いコク、良質な甘味、熟成香、そして後味に残る上質な余韻まで、ひとつひとつの要素を単独で評価するのではなく、その結果として生まれる「全体感」を大切にしています。
2025年12月には中味とデザインをリニューアル。2026年4~9月の出荷数量は前年同期比107%となり、飲食店での取扱店舗数も6,000店を超えています。
2022年比では168%まで拡大しているとのこと。
マスターズドリームは、少しずつではありますが確実に、「特別なビール」から飲食店の現場へと広がっています。
「伝統だから使う」のではない
今回のセミナーで印象的だったのが、サントリーのものづくりに対する考え方です。
伝統的な原料や製法をそのまま採用するのではなく、まず「なぜ、この方法でおいしくなるのか」を考える。
そして仮説を立て、自分たちが納得できる方法で検証し、その結果を技術として磨き上げていく。
その先に、技術の深化や革新があるといいます。
マスターズドリームには、その思想を象徴するような製法がいくつも採用されています。
そのひとつが「銅炊き仕込」です。
銅釜を用いることで生まれるコクや芳ばしさに着目し、サントリーではその効果を検証。素材のうまみをより引き出すため、独自の「銅製循環型ケトル」へと発展させています。

銅製循環型ケトルのミニチュアの見本。
もうひとつが、伝統的な製麦方法である「フロアモルティング」です。
フロアモルティングとは、発芽させた大麦を床に広げ、人の手で撹拌しながら麦芽をつくる伝統的な製麦法。ピルスナーウルケルなど、ヨーロッパの伝統的なビールづくりを知る人には馴染みのある言葉かもしれません。
それは非常に手間のかかる方法ですが、サントリーでは通常麦芽との違いを分析し、フロアモルティング麦芽の製法がもたらす複雑さや味わい、余韻に着目しています。
そして、これらを組み合わせて生まれたのが、マスターズドリーム独自の「Ensemble Mashing Technology」。
フロアモルティングによるダイヤモンド麦芽、銅炊き仕込、さらにトリプルデコクションを組み合わせ、「多重奏で、濃密。」という味わいをつくり上げています。
3回煮出す。いまどき、そこまでやる理由
トリプルデコクションとは、仕込中の麦汁の一部を別の釜へ移し、加熱して戻す工程を3回繰り返す製法です。
実際には2つの釜の間で麦汁を移動させながら加熱するため、エネルギーも時間も必要になります。
当然、コストもかかります。
それでも3回行う理由について、質疑応答では「ダイヤモンド麦芽」の特徴について説明がありました。
一部使用しているダイヤモンド麦芽は硬さのある麦芽。その特徴から味わいをしっかりと引き出すためにも、3回のデコクションによって十分に“ほぐして”いく必要があるのだそうです。
手間がかかるから減らすのではなく、その素材の味を引き出すために必要であればやる。
マスターズドリームのものづくりをよく表しているエピソードだと感じました。
100Lから100kLへ。大きくなれば同じ味にはならない
今回の取材でもうひとつ興味深かったのが、ビールのスケールアップについての話です。
サントリーの工場では、100kL単位でビールを醸造します。
一方、新しいアイデアを形にするためのパイロットプラントでは約100L。実際の工場の1000分の1ほどのサイズです。
さらに、新製品などを試験醸造するミニブルワリーでは約5,000L。
100Lでおいしいビールができたからといって、そのまま100kLに拡大すれば同じ味になるわけではありません。
設備の大きさが変われば、熱の伝わり方、反応の速度、液体の動き方も変わります。
小さな設備で生まれた「おいしさ」を、大きな工場でも再現する。
そこに醸造家の技術が問われます。
「できるものをつくる」のではなく、まず「つくりたいもの」を決め、そこに近づくために課題を解決する。
サントリーでは、この考え方を「進歩を伴うやり方」としています。
ビールを木樽で熟成させるという挑戦
そして、マスターズドリームのものづくりの中でも、さらに尖った存在が〈原酒樽熟成〉シリーズです。
シリーズ誕生は2016年。
サントリーのモルトウイスキー原酒に使用した原酒樽でビールを熟成させることで、木樽熟成による熟成香と長い余韻が感じられます。
この製品を開発するにあたり、醸造チームは世界中のバレルエイジドビールを飲み、木樽熟成によってどのような味わいが生まれるのかを研究したといいます。
さらに、サントリーにはウイスキーづくりで培われた木樽の知識があります。
ウイスキー部門とも議論を重ね、木製チップを使った評価なども行いながら、マスターズドリームに適した樽、熟成条件、ベースとなるビールを探していきました。
完成までには10年以上を要しました。
樽に負けないビールをつくる
木樽に入れるビールは、通常のマスターズドリームをそのまま使っているわけではありません。
基本となる骨格はマスターズドリームでありながら、木樽による香りや味わいにビールそのものが負けてしまわないよう、より重厚なベースビールを醸造します。
樽に詰めておけば完成、というものでもありません。
熟成が長くなれば、木から渋味などが出てくることもあります。そのため熟成途中にも状態を確認し、樽ごとに熟成期間を判断します。

ビールの熟成を終えた山崎の原酒樽。上部の穴から香りを確かめると、思わずもう一度嗅ぎたくなるほど、豊かで心地よいウイスキー香が残っていた。
しかも木樽は一本一本、状態も個性も異なります。
同じ条件で熟成しても、出来上がるビールの味わいは同じではありません。
そこで最後に重要になるのが、醸造家による官能評価です。
それぞれの樽を試飲して味を見極め、最終的にブレンドすることで、ひとつの「マスターズドリーム〈山崎原酒樽熟成〉」へと仕上げていきます。
2026年の〈山崎原酒樽熟成〉では、およそ200~300樽ほどを使用しているとのこと。
ひとつの樽の容量は約200~250Lです。
樽への充填も人の手で行われます。
そして、ビールの熟成に一度使用した樽は再使用せず、役目を終えるそうです。
大量生産されるビールのイメージとは、かなり離れた世界です。
「重厚な熟成香と満ち溢れる余韻」
「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム〈山崎原酒樽熟成〉」の特徴は、
「重厚な熟成香と満ち溢れる余韻」
2026年は醸造条件を調整することで、より複層的な熟成香を楽しめる味わいを目指したといいます。
マスターズドリームの特徴であるダイヤモンド麦芽、トリプルデコクション、銅炊き仕込はそのままに、山崎蒸溜所のモルトウイスキー原酒に使用した原酒樽で熟成。
パッケージも刷新され、黒を基調とした化粧箱には樽のイラストが描かれています。「山崎原酒樽熟成」であること、そして特別な限定品であることをより明確に表現したデザインとなりました。
商品は715ml、アルコール度数8.5%。希望小売価格は6,000円(税別)で、10,000本の数量限定。一部ECチャネルで販売されます。
発売日は2026年11月10日(火)です。
マスターズドリーム〈原酒樽熟成〉シリーズ 2026 公式サイト
「普通のビールではやらないこと」をやる

質疑応答の中で、ブランドの今後について印象的な言葉がありました。
「普通のビールではやらないことをやりたい」。
マスターズドリームは、ザ・プレミアム・モルツというブランドの一角を担いながら、その中でもさらに先へ、より尖った方向を目指していきます。
そこには、アジア圏を中心としたインバウンド需要への挑戦もあります。
「日本のビール」という枠だけではなく、日本の酒文化やものづくりの技術そのものを伝える商品へ。
そうした挑戦がマスターズドリームを成長させ、やがてザ・プレミアム・モルツというブランド全体にも良い影響を与えることを目指しています。
マスターズドリームの「夢」は、完成した一本のビールの名前ではありません。
伝統を重んじながらも、その理由を問い、検証し、新しい技術へ変えていく。
効率化が当たり前になった時代に、あえて手間を増やす。
そして、その先にしかない味を追い続ける。
10周年を迎えた〈原酒樽熟成〉シリーズを取材して感じたのは、マスターズドリームという名前が、やはりとてもよくできているということでした。
醸造家の夢は、まだ途中です。
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。









