[テイスティング]2015.8.18

インドを目指したジャーマンIPA―ビアレポート(117)

基本的にジャケ買いの私です。

世界中で数えきれないほどのビールが造られている昨今、どうやって飲むビールを選ぶかというのも人それぞれ。自分のビールの選び方はジャケ買いです。ビアバーに行った時は、アルコール度数が低めのものから高いものへ、といったような飲み方をするのですが、酒屋でビールを買うときはほぼジャケ買い。酒屋に入って棚を見渡すと、選ぶべきビールのラベルが光って見えるのです。

…ちょっと言い過ぎました。

が、先日酒屋に行ってみると、光りはしないまでも、今までのどんなビールよりも目を引くビールがありました。ドイツのSt.ERHARD「Farmhouse IPA」です。

Farmhouse IPA

Farmhouse IPA

全身オレンジ色に塗られたボトル。棚に並んでいたら一番目立ちます。

このビールは醸造所名が「St.ERHARD」なのですが、ドイツ語読みでカタカナにすると「ザンクト・エルハルト」でしょうか。インド人とドイツ人がバンベルクで2011年に創業した醸造所で、ヨーロッパだけでなくアジアへの輸出にも積極的なようです。

と、「でしょうか」「ようです」と歯切れの悪い言葉を使っていますが、実はほとんどこの醸造所、ビールの情報がないのです。公式ウェブサイトを見てもこのビールの説明がなく、途方に暮れていたところ、先日ニュースで話題になった『フィナンシャル・タイムズ』にこの醸造所についての記事(2012年11月12日付)がありました。ごくごく簡単にその内容を書くと、「インドではドイツビールの評価は高かったが、入手は難しかった。また、インドでは特別で贅沢なビールを求めている人もいた。インドへの輸出は多くの困難があったが、デリーやムンバイなどのホテルやレストランを中心に販売していく予定だ。ドイツ国内よりもアジアにフォーカスしている」といったところでしょうか。

その記事から3年経っていますので、状況は変わっているでしょうが、アジア重視は変わらないのでしょう。

さて、肝心の味ですが、モルトの甘味を強く感じつつ、さわやかさもある味わい。ダージリンやブドウを思わせる華やかなフレーバーも感じられます。スタイルはIPAですが、苦味はそれほど強くありません。モルトの味わいを重視したドイツらしいIPAですね。

IPA以外にもセゾン他、いくつかスタイルがあるようなので、光っているのを見つけたら手に取ってみてください。

【BEER DATA】
Farmhouse IPA
生産地:ドイツ
醸造所:St.ERHARD
スタイル:IPA
アルコール度数:6.5%

IPAドイツ

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

富江 弘幸

ビールライター

1975年、東京都生まれ。法政大学社会学部卒業後、出版社でライター・編集者として雑誌・書籍の制作に携わる。その後、中国留学、英字新聞社ジャパンタイムズ勤務を経てビールライターとして活動中。ビアジャーナリストアカデミーの講師も勤める。

【著書】
教養としてのビール(サイエンス・アイ新書、SBクリエイティブ)
BEER CALENDAR(ワイン王国)

【執筆・監修】
和樂web(小学館)
Discover Japan(ディスカバー・ジャパン)
東京人(都市出版)
ビール王国(ワイン王国)
ビール大全(楽工社)
るるぶキッチンmagazine 秋冬号(JTBパブリッシング)
あなたのしらない、おいしいビール(cakes)
他多数。

【出演】
金曜たまむすび(TBSラジオ)
ちきゅうラジオ(NHKラジオ第1)
すっぴん!(NHKラジオ第1)
浜美枝のいつかあなたと(文化放送)

Twitter:hiroyukitomie
Website: 地域とビール
Weblog: 地域とビールとブログと

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