[コラム,ブルワー]2021.3.11

【ビールのある風景in岩手⑯】あれから10年…いつものベアレンビールが飲める幸せ

10年前のビールのこと

東日本大震災が起きてから、今日で10年が経ちました。

東日本大震災については、特に今月に入ってから様々なメディアでいろいろな角度から取り上げられています。沿岸の自治体に住んだ経験はあっても被災者ではない私が語れることは少ないし、そもそもここはそういう場ではありません。
ただ東京在住であっても当時から岩手のベアレンビールの定期購入を利用していたので、毎年この時期になると、最初の2~3日醸造所の状態がまったくわからず心配だったこと、直接的な被害はほぼなかった後も物流がストップし当分の間飲めなくなると覚悟したことなど、ビールがらみで思い出すこともあります。様々な思いの中で、いつも当たり前のように取り寄せて飲んでいたお気に入りのビールが飲めることのありがたさを痛感した時期でもありました。(実際には思ったよりも早く3月下旬にはビールが届きました。数えきれないほど通信販売でもビールの購入をしていますが、ビールが届いて涙が出たのはあの時だけです。)

改めてあの時届いた3種類の定番ビールの紹介をしたいと思います。どのビールも、落ち着いた調和がとれた味わいです。


(左から)
◎クラシック:ドイツドルトムントでかつて輸出用に造られていたエキス分の高いビールを「エキスポート」と言い人気を博していました。このスタイルがクラシックです。苦みとコクのバランスが良く、しっかりとした味わいが特徴のラガービールです。度数:6%
◎シュバルツ:シュバルツはドイツ語で「黒」。主に旧ドイツ圏で飲まれてきたビールです。色は真っ黒なのに、味わいはまろやか、キレがありたくさん飲めてしまう黒ビールです。度数:5.5%
◎アルト:現在のラガー(下面発酵)ビールが発明される以前の伝統的なスタイルのビールで、上面発酵酵母を用いております。口当たりがまろやかで、軽い飲み口が特徴のエールビールです。度数:5%
<BAEREN YEAR BOOK(2021year)より引用>

*当時とラベルは変更になっています。
*2020年4月からヴァイツェンも定番になっています。

あれから10年…ベアレンは新しく完成した雫石工場で缶ビールの醸造も開始しました。新たな味わいのビールも数多く販売され、最近ではミッケラーとのコラボビール「ミッケラー×ベアレン クールシップウィーンラガー」の限定発売も大きな話題になっています。

日本のクラフトビール全体に目を向けてみても、醸造所数も急増し、造られるビールもますます多様化してきました。「新製品」「限定醸造」「期間限定」などとあると追い求める人も多く、あっという間になくなってしまったということも聞きます。新しいビールや珍しいビールを通じ、ビールの面白さや奥深さを感じる機会はこれからもますます増えていきそうで、それはそれでとても楽しみです。
でも、10年前に飲んでいたビールが定番として根付いたまま、変わらずに飲めることも大変ありがたいことだと思います。当たり前だと思っていたことが当たり前でなくなることもあるのですから…

飲み飽きないビール

2019年の年末、ドイツを旅してきました。ケルンで滞在したときに飲んだのはもちろんケルシュ。細長い円柱状の専用のグラス(シュタンゲ)で飲むのが一般的で、シュタンゲをたくさん乗せられる特殊なお盆(クランツ)で運ばれてきます。グラスが空になると追加でオーダーしなくても、まるでわんこそばのように次々と新しいビールに取り換えてくれます。デュッセルドルフでのアルトも同じような形での提供でした。
同じビールを飲み続けるのに不思議と飽きずに美味しく飲め、地元の方に特に愛されるビール…日本でこんなビールがあっただろうかと考えたときに、思い浮かんだのがベアレンの定番ビールでした。
定番ビールのうち、クラシックは2015年「世界に伝えたい日本のクラフトビール」に選出されていますが、おかわりビールにひとつだけ選ぶなら個人的にはアルトです。
きれいな赤褐色で口当たりはまろやか。爽やかなホップの香りと苦みに加えほのかな甘みもあり、全体的にバランスガ取れていて軽やかで落ち着く味です。

そんなベアレンの定番ビールがいつでも飲める盛岡という街は、とても幸せな場所です。そして、岩手県では盛岡から離れた場所であっても普通のスーパーで当たり前のようにベアレンの定番ビールが買えるのもありがたいです。(地元の方は、意外なほどこのありがたみがわかっていないようでもありますが…)

創業からの思いとして地域密着を掲げ、地元岩手に根差したビール文化の醸成に取り組んでいます。もし、あなたが岩手より遠く離れた地でベアレンを飲んで気に入ったのなら、ぜひ岩手に来て、ベアレンを味わってみてください。きっと、一味違うおいしさを感じていただけるものと思います。
<BAEREN YEAR BOOK(2021year)より引用>

あの時感じた「いつもの美味しいビールが飲めることのありがたさ」を思い出しながら、今日も美味しいビールを岩手で飲んでいられることに感謝します。

3月中の企画

もし盛岡に行ったとしても、飲める機会が限られているならやっぱり珍しいビールを優先してしまいそう…という方にも朗報です。
盛岡にあるベアレン直営3店舗(下記記載)では、現在飲み放題企画を実施中です。8~10種類ぐらいのベアレンビールのほか、ワインやカクテルなども2時間飲み放題で2200円(税込み)で、予約不要でひとりでも利用出来ます。これならお会計を気にせず定番のビールも限定のビールも飲むことが出来るし、気に入ったらおかわりも気軽に出来ますね。

*それぞれのお店でつながっているビールは違います。どうしても飲みたいビールがある時は、事前に確認することをおすすめします。

ビアベースベアレン盛岡駅前
盛岡市盛岡駅前通8-11 盛岡駅前ビル地下1F
TEL  019-601-7110
営業時間 17時~24時 (土日祝日は15時~)
定休日 なし
菜園マイクロブルワリーwith kitchen
盛岡市菜園1-5-10 グリムハウス1F
TEL 019-606-0171
営業時間 17時~24時 (土日祝日は15時~)
定休日 なし
ビアバーベアレン中ノ橋
盛岡市中ノ橋通1-1-21
TEL 019-651-6555
営業時間 17時~24時
定休日 日曜・祝日(連休の場合は最終日のみ)

首都圏の方へは追加でお知らせです。
現在日本橋高島屋で「大いわて展」が開催中です。ベアレンのブースもあり、瓶・缶ビールの購入だけでなく樽生ビールのテイクアウトも可能です。今月15日までと残り期間が少なくなっていますが、まだの方はぜひこちらものぞいてみてくださいね。

株式会社ベアレン醸造所
盛岡市北山1-3-31
TEL  019-606-0766
FAX 019-626-0201
(工場直売所は営業時間 9時30分~17時30分  定休日 なし)

アルトクラシックシュバルツベアレン醸造所岩手東日本大震災盛岡

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

(一社)日本ビアジャーナリスト協会 発信メディア一覧

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この記事を書いたひと

きただ ともこ

ビアジャーナリスト

ビールと旅と野球観戦が大好きです。
主に、ビールがどんな土地で造られてどんな感じで飲まれているかに関心があり、気になるビールが出来るとその地元を訪ねたくなります。日本全国たまには海外にも足を運び、特に国内は岩手、海外は韓国のクラフトビールに注目してきました。
ビール好きがきっかけで岩手にどっぷりはまり、2019年4月から岩手沿岸の仮設住宅に住みながらの仕事を経験。現在も岩手に拠点を置き、得た情報を実際にこの目で確かめながら、岩手中心に東北地方のビール事情を発信してきました。最近は、日本語での情報が少ない韓国のビールについても、現地に足を運んで手に入れた情報をもとに記事にしています。

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