リトアニアと聞いてあなたはどんなイメージを思い描きますか?
恥ずかしながら、筆者はあまり多く思いつきませんでした。
しかし、とあるインポーターとの出会いがきっかけで、ビールやリトアニア文化について学ぶこととなりました。

リトアニアについて
リトアニアは面積6.5万平方キロメートル、人口約288万人、
リトアニア語がメインの言語で、最初の独立後ソ連に併合されますが、1990年に再度独立。
いわゆる「バルト三国」のうちの一つです。
因みに日本の面積は37.8万平方キロメートル、人口は約1億2000万人。
中世ヨーロッパの街並みを残しバルト海に面しているので緑豊かに思えましたが、森林率という指標では日本には遠く及ばないながらも反対に農地率では3倍近くの差をつけています。
ですが現在の主な産業は石油精製、食品、木材加工、家具製造業に加えレーザー技術やテック分野などの発展がめざましい国。
日本との関係としては、杉浦千畝氏が通称「命のビザ」を発給したことで知られているため親日の方が多く、
記念館が建てられていることはご存じかもしれません。
そんなリトアニア。実はビール大国で、最新の「一人当たりのビール消費量」ランキングで世界2位だったことも(※)。それ以前をさかのぼっても3位、5位、3位と常に上位をキープしています。
※ キリンホールディング株式会社「2024年 国別一人当たりビール消費量」(2025年12月)
リトアニアの風土についての詳細は下記で紹介するŠventėのページをご覧ください。
インポーターとの出会い
リトアニアのビールは2026年現在リカーショップやまやを中心にVolfas Engelmanなどが購入はできますが、
それはあくまで現地の大手メーカーに当たる存在であり、私の興味はリトアニアのクラフトビールにも向いていました。
そんな中、Instagramにてリトアニアのビールのインポーターを発見します。
Šventė(スヴェンテ)はリトアニア製品輸入の専門店。
リトアニアはウォッカ、スピリッツなどの酒類以外にも蜂蜜やそばの実、ハンドクラフト雑貨も特産品なので様々なものを輸入されていますが、その中にクラフトビールもあり、個人的に注目していたインポーター。
ところが、ある時期から商品のストックにビールを見かけなくなりました。
というのも、輸入品の中でも賞味期限が短くなりがちなビールは、ブルワリーからの最低仕入れケース数の条件に合わせつつ、日本独自の商習慣「3カ月ルール」以内で継続させるにはハードルが比較的高い商材。
一度輸入されてから、長らくストップされていたのでした。
しかしその後も東京ビッグサイトへの出店、リトアニア大使館とのお仕事など、
これまでの活動がメディアに取り上げられ再販の声も高まってきたため、輸入再開を決意。
現在クラウドファンディングにて出資を募っています。
今回は先行してGENYS BREWINGのビールをご提供いただきました。
いただいたのはŠeštas Mėnuo/SIX MONTH という名前のビール。
GENYS BREWINGは2016年創業。ビールレビューサービスUntappdによると規模的にはナノブルワリーに入りますが、かつてビール評価サイトRatebeerにて2018年にリトアニアのベストブルワー賞を獲得した経歴もあります。
今回は先入観を持たずに臨みたかったのでスタイルも度数など、前情報は一切聞かずにテイスティングさせていただきました。

Šeštas Mėnuo/SIX MONTH ABV3.5%
アロマ…
ほんのりラズベリーや小麦?オーツ?のまろやかそうなコーティングがある印象の香り。
この時点でオフフレーバーの類は認められず、フルーツの香りに思わず口元が吸い寄せられていくかのようです。
マウスフィール…
滑らかでこの手のスタイルでビネガーのように酸味が立っているタイプもある中、こちらはまとまりがあり味全体が優しく膜に覆われているかのような統一感があります。
喉の奥に草っぽい苦味がかすかに滞在し、やっとビールであることを思いださせるような、夢心地にさせるフレーバーですね。
その苦味すらもバランスの良い甘酸っぱさでワンクッション置いてくれるので、不快さは一切ありません。非常に完成度が高い一本。
ラベル…
表は非常に賑やかなラベル。女性と、焚き火でしょうか。焚き火を囲った交流はリトアニアでは夏至の頃によく行われるらしく、その様子を描いたのでしょう。
度数ABVは3.5%。かなり低いですね。
スタイルはMILKSHAKEALE WITH RASPBERRIESとあります。
「ミルクシェイク〜」とは近年日本でもリリースが増えてきたスタイル。
元々ニューイングランドIPA(ヘイジーIPA)の派生で誕生したモダンなスタイルであるため、造り手により多少幅がありますが、
酵母が分解できない乳糖を入れることでビールに甘味を与えるのが大きな特徴です。
元々の滑らかな口当たり、低い度数と甘味がミルクシェイク系の強みですね。
裏面まで含めてかなり情報量が多いですが、日本ではあまり見かけないタイプのタッチでもあり、棚に並んで置かれていても訴求力が高そうです。
続いて数字を見ると、苦味の指標IBU10の記載もあります。
この10という数ですが、
IBUの10というのは雑菌による繁殖汚染を防ぐのに必要なビタリングホップの量であるため、品質保持意識も高くレシピ設計も良好であることが伺えます。
また、色の指標EBCまで記載されているデザインは初めて見ました。
スタイルを強く意識しているのか、
あるいはレシピ変更がない想定の自信から来るものなのかと想像が膨らみます。
テイスティング総評
甘味にはデキストリン系ではないか?という特有のもったり感があり後半それはさらに顕著になりました。
裏面を確認してみます。
erythritol(エリスリトール) という文字を発見。これが優しい印象の正体ですね。
初めて聞く甘味料だったので調べたところ、天然由来の糖アルコール甘味料とのこと。
詳細はクラウドファンディングページに譲りますが、
GENYS BREWINGはリトアニア初のオーガニック認証を取得したラガーや、ヴィーガンフレンドリーなビールを積極的にリリースしています。(完全な認証自体は未認可)
エリスリトール一つとっても彼らの意識の高さが垣間見えました。
肝心の甘味もフルーツとの相性が良い程度に調整されており、ドリンカビリティが大変高いです。
個人的な主観になりますが、ヨーロッパのビールはアメリカのような味がはっきりしたタイプよりはトータルのまとまり重視で穏やかな味の傾向が強い印象があります。
つまり日本人の食文化にも比較的合わせやすいのでは?
Untappdの「Untappd Community Awards」にて銀賞、銅賞も獲得していることが判明。
これほど高く評価されているビールが飲めるようになったら嬉しいですね。
【 商品概要 】
商 品 名 : Šeštas Mėnuo/SIX MONTH
原 料 : water,barley malt, wheat malt,raspberries,wheat flakes,oat flakes,natural sweetener erythritol,hops,yeast
アルコール度 : 3.5%
容 量 : 440ml
Šventėインタビュー
ここからはŠventėの橋本様への追加の質疑応答の模様をお送りします。
Q. 奥様とはどのタイミングで出会われたのでしょうか?
A. 妻とは2015年のロンドン語学留学中(ワーキングホリデー)に出会いました。
当時、イギリス在住の日本人と外国人をつなぐサークルのようなものを運営しており、夏休みにたまたまロンドンに滞在していました。
そこでもともと日本文化が好きだった妻が、そのサークルを見つけて声をかけてくれたことが出会いのきっかけです。
Q. リトアニアのブルワリーの中でもGENYS BREWINGを選んだ理由は?
A. リトアニアビールの中でいちばん美味しい。これが色々なリトアニアビールを飲んできて持った結論です。
彼らは斬新な味やスタイルに挑戦し続け、尚且つ素晴らしい味を実現していて、他国のブルワリーとのコラボも多く同業他社から愛されているブルワリーなのも応援したい理由の一つです。
商業的な生産方法を取り入れず、人気ブルワリーになった今も昔と変わらない理念で活動し続けていること。
創業者がヴィーガン推奨派でヴィーガンマークを缶に入れている点も、ヴィーガン推奨派の我々夫婦と合致している理念の一つです。
Q. 日本のクラフトビール好きの皆さんにメッセージがあればどうぞ
A. 私はクラフトビールのプロではありませんが、リトアニアのプロだと自負しています。
数あるリトアニアのブリワリーの中でも一際個性的で、自信を持ってお勧めできるGENYS BREWING。
世界のビールを体験している皆様にも、訪れていただきたいリトアニアのクラフトビールをぜひ体験していただければ幸いです。
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。
この記事を書いたひと
この記事を書いたひと
ビアジャーナリスト/ビアジャッジ/ミュージックコーディネーター
一本のビールとの出会いから人生が狂い、世界中のビールを飲み比べるようになる。
ビール嫌いを克服できた自分と同じように、
ビールが苦手な人をこの世界から救うために活動を決意。
麦とホップと酵母と音楽と狂気を武器に独自の視点で執筆することを誓う。
■IBC、JGBA参加ビアジャッジ、びあけん2級所持。ビールセミナー開催、ビールメーカー官能チェック案件経験あり
■調理師免許所持
■年間レビュー400銘柄以上継続
海外生活、旅行経験から国内クラフトビールだけでなく世界のビール事情にも知識あり
様々な音楽、世界の料理にも広く触れており、
過去には飲食店へのBGMプレイリスト提供やビールのペアリングイベントも実施
知識を活かしビールと音楽や料理をペアリングするシリーズをjbja公式X(旧twitter)などにて定期連載中
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