超レア!アメリカ最大の審査会GABF受賞ビールを飲んでみた

“HEY!ジャパンでGETできないアメリカの受賞ビール、送るゼ~”
先日、こんなメッセージがアメリカの友人から届きました。詳しく聞くとアメリカ最大のビール審査会に行ってきて、金・銀・銅メダルをとった銘柄を買ったので送ってくれるとのこと。
日本に輸入されてない受賞ビールが飲めるとは嬉しすぎる。でも1人で飲むのはもったいない…
そこで、ブルワーやビアジャッジ(審査員)を誘ってテイスティング会を開催しました。ビールの感想に加え、米国ビール業界の最新情報をお伝えします!
全米から8,000超のビールが集まるGABF
友人が参加したのは、通称GABFと呼ばれるGreat American Beer Festival(グレート・アメリカン・ビアフェスティバル)。毎年、秋にコロラド州デンバーで行われるビールの祭典です。

GABF公式サイトより(クリックすると受賞者一覧が見られます)
第39回目となった去年のフェスティバルには、全米から8,315の銘柄が出品されました。ちなみに、日本最大級のインターナショナル・ビアカップの出品数は約1,500。GABFの規模の大きさがよく分かります。
出品された膨大な数のビールは100以上のカテゴリー別に審査されます。
※一昨年からサイダー(りんごの酒)もカテゴリーに加わりました。これもトレンドですが、この記事では割愛します

GABF2025授賞式の様子
審査会のカテゴリーは、エントリー数が多いほど「人気のビアスタイル」である証。GABF2025の出品数トップ2は
・ジューシー or ヘイジーIPA:301エントリー
・ウエストコーストIPA:300エントリー
前の年と比べるとヘイジーIPAは出品数が減り、ウエストコーストIPAが微増したことでトップを競り合う形となっています。
そして今回送ってもらったビールにも、2つの激戦カテゴリーを勝ち抜いた銘柄が入っていました!
届いたビールはこちら。
詳細は後述しますが、受賞ビールは左から3~5本目で
【ウエストコーストIPAカテゴリー・金賞】
Westbound & Down BrewingのHow the West was One: Mosaic
【ジューシーorヘイジーIPAカテゴリー・銀賞】
MadeWest BrewingのMadeWest Hazy
【ホッピーラガー カテゴリー・銅賞】
同じくMadeWest Brewing のSound Sail
筆者は、一番右のCasa Agria(カーサ・アグリア)以外は初めてのブルワリーばかり。期待が高まります!
受賞ビールを日米でオンライン・テイスティング
テイスティング会を行ったのは、GABFから約1か月後の去年11月。
ビールを送ってくれたカリフォルニア在住のビアライター、アンドリューさん(画面上)もオンラインで参加し、同じ銘柄を飲みました。

日本からは画面下の4人が参加しました。
左手前から時計回りに、ビアジャッジでビアジャーナリストの1Dozen(わんだーす)さん。
隣がカギヤブルワリーの醸造家・星野太志さん。
右奥が紅一点、クラフトビール好きのしろやぎさん。右手前が筆者ジョー・ビアスキーです。
まずは、ホッピーラガーのカテゴリーで銅賞を獲得したMadeWest BrewingのSound Sail(アルコール度数5.8%)から飲んでいきます。

こちらのビール、しっかりとホップの香りと味があるものの、炭酸が強めで爽快な喉越しです。ビアジャッジの1Dozenさんは、桃や梨の香味を感じていました。そして皆から「これピルスナーなの?」 「IPAと言われても分からない」という声が。
アンドリューさんによると、Sound Sailのビアスタイルは「ウエストコースト・ピルスナー」。アメリカでは2020年前後に、エール系よりも度数が低いピルスナーにホップを大量投入したビールが人気になりました。
ただ、今は揺り戻しでIPA回帰が起きていて「ウエストコースト・ピルスナーは、ちょっと前に流行ったスタイル」だといいます。

ブルワーの星野さんと筆者は、今回飲んだ中でSound Sailが最もタイプでした。
続いて、ウエストコーストIPAカテゴリーで金賞に輝いたWestbound & Down BrewingのHow the West was One: Mosaic(6.6%)です。

多くのビールは複数のホップを組み合わせて造られますが、こちらはシングルホップIPAといって1種類のホップ(このビールの場合はモザイクホップ)だけを使用したIPAです。
参加者の多くがストーンフルーツの香味があることは一致しつつも、様々な特性を持つモザイクホップだけに
1Dozenさんはマンゴー・ライチ・マスカットを
筆者とブルワーの星野さんは桃
しろやぎさんはシャルドネやトロピカルっぽさ
アンドリューさんはアプリコットも感じると盛り上がりました。
Westbound & Down Brewingはこの銘柄を含め6つのカテゴリーで受賞し「ベストブルワリー」のひとつに選ばれました。近年アメリカで快進撃を遂げている醸造所です。
3本目はMadeWest BrewingのMadeWest Hazy(7%)。ジューシー or ヘイジーIPAカテゴリーで銀賞を獲得しました。
ヘイジーIPAはアメリカ北東部の発祥で濃厚さが特徴ですが、こちらは暖かい南西部で造られているためか、比較的クリアな外観とジューシーで重たくない飲みごたえ。
ビアジャッジの1Dozenさんは「7%とは思えない軽めのボディがすごい。スイスイ飲める」、ブルワーの星野さんも「思ったよりライトで飲みやすい。いい意味で裏切られた」との感想でした。
このビールに使われているホップは、モザイクとシトラ。飲むとトロピカルで、参加者からは桃(白桃)・パイン・コットンキャンディー・オレンジの皮などを思わせるという感想が。
感じ方に個人差はあるものの、皆が受賞ビールのクオリティーに舌を巻いていました。
米国ビールライターお薦めの3本
受賞ビール以外にも、アンドリューさんお薦めのビールを紹介していきます。
まずはGABFで6つのメダルを獲得したWestbound & Downと、日本で「アザハ」と呼ばれて人気のOther Half Brewingによる豪華コラボ、Stay Forever Ever(8%)です。

このビールは、発酵・熟成の段階でホップを2回漬け込んで香りを引き出すダブル・ドライホッピングを行なったインペリアル・ヘイジーIPA。
ビアジャッジの1Dozenさんが開口一番、「これはすごいわ!」と叫びました。ネクターやマシュマロ、そして少しベリーを思わせる香味がとてつもなく良く、口当たりもスムースだと大絶賛です。

インペリアル(=ダブル)ヘイジーIPAなので缶にドロっとしたオリが溜まっているかと思いきや…缶底まで注いでも液色はほとんど変わりません。味も最後まで同じで、1Dozenさん(画面左)は、この日飲んだビールで最も気に入っていました。
最後の2本は、日本でも見かけるブルワリーのビールです。

左は、Humble Sea BrewingのHull Yeah!。カリフォルニアの有名なブルワリーで、日本でもネットなどで売られているのを見たことがあります。
右は、Casa Agria Specialty AlesのSuper Space Craze。Casa Agria(カーサ・アグリア)は日本でも人気のブルワリーです。気になる方はアンテナ アメリカなどで買ってみてください…と書いて終わろうと思っていたら驚きのニュースが飛び込んできました。
【想定外のエピローグ】
テイスティング会の翌月、そしてこの記事を書いていた2月に、Casa Agriaがタップルームと醸造所を相次いで「閉鎖する」と発表しました。
私自身、Casa Agriaの絶品IPAを何種類も飲んでいたのでショックでした。

Casa Agriaのタップルーム閉鎖を知らせる投稿
Casa Agriaは、今回ビールを送ってくれたアンドリューさんの地元のブルワリー。話を聞くと、オーナーとヘッドブルワーは「Casa Agriaのブランド名はそのままで、他のブルワリーに委託醸造する」としているものの、いつ実現するかは分からないとのことでした。
実は去年、アメリカでは2年連続で、新規開業よりも「廃業したブルワリー」の数が上回りました。ビールの消費量が減る中で、全米9,800ちかいブルワリーの淘汰が進んでいるのです。
Casa Agriaのように閉鎖するブルワリーがある一方で、GABFの6部門で受賞したWestbound & Downは2年後に製造を4倍にするとしています。

Westbound & Down Brewing(GABF2025授賞式にて)
奇しくも、明暗が分かれたブルワリーのビールが集まった今回のテイスティング会。振り返って感じるのは、アメリカのクラフトビールの「高いクオリティー」と「厳しい競争」です。
その競争からいったんお休みをしたCasa Agriaが復活すること、そして競争の中で新たに生まれるビールやブルワリーとの出会いに期待したいと思います。
※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。









