[コラム,テイスティング]2016.2.5

【ビール de ショートショート vol.2】「こたつ、それは小宇宙」/はなきんぶろんど(伊勢角屋麦酒)

味わい、パッケージ、ネーミング、商品コンセプトなどから思い浮かべるストーリー。
今日のビールは…はなきんぶろんど(伊勢角屋麦酒)

「こたつ、それは小宇宙」

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からっ風がガタガタと窓を鳴らす。薄暗く分厚い雲に覆われた空からは、今にも白いものが舞いそうだ。こんな休日は、外へ出かけるのも億劫になる。少々だらしないが、今日は一日こたつで過ごそう。

テレビのリモコン、スマートフォン。それから、スナック菓子とティッシュペーパー。トイレへ行くのも面倒なので、水分は必要最小限。準備は万全。布団をまくり足を入れると、途端にじわっとつま先が熱を帯びる。みぞおちの辺りまで布団を引き上げて、「もうここから出ないぞ」と心に決める。あまりにも重大な忘れ物に気づいたりするのは、大体こんなときだ。

「みかん」。こたつという幸せな小宇宙を旅するには、みかんが不可欠。周りを見渡せば、半身をさらせば届くかどうかという位置にみかんの入った籐かごを発見した。精一杯身をよじったり、上体が反り返るぐらいに背伸びをしてみても、一向に届かない。焦るな。みかんは必ずこたつを出ずして手に入れてみせる。人は道具を使う生き物だ、リモコンを使え。テレビのリモコンを手に、コン、コンとみかんのかごを叩く。そうしてようやくかごに手をかけると、みかんがバラバラと転がり出た。

そのうちの1つを取り上げ皮をむくと、甘酸っぱい香りが鼻をつく。たまらずカプッと一房放り込むと、薄皮がぷちっと弾けてジューシーなフレイバーが口いっぱいに広がる。白皮の苦味はご愛嬌。ああ、もう満足。転がり出たみかんは、またあとで片せばいい。

ふと外を見ると、はらりはらりと雪が舞いはじめている。ひとひらが窓にぴたっと張りつき、すぐにじわっと溶けていった。
こたつ。ここは小宇宙。私の意識は、あたたかく怠惰な無重力空間をふわふわと漂いはじめた。

はなきんぶろんど(伊勢角屋麦酒)

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「国産の天然酵母でビールをつくりたい」。伊勢角屋麦酒のあるブルワーの情熱が実り誕生した、「東農大花酵母」を用いたビール。それまで日本酒や焼酎の蔵元からなる「花酵母研究会」でしか使用されてこなかったこの花酵母で醸されたビールは、2015年8月の「はなきんせぞん」、同11月の「はなきんるーじゅ」に続く3作目。

今回は「こたつでみかん」のコンセプトのもと、みかんの花酵母を用いて醸造。果実感とフレッシュな酸味をいかすため、すっきりした味わいとほのかなモルトの甘みを感じられるブロンドエールに仕上げた。ホップは、みかん花酵母の香りに寄り添うアマリロ、グレイシャー、モザイクの3種を使用。

淡く美しい金色の液体。グラスの注いだ瞬間から、みかんなど和柑橘、パインやマンゴーなどのトロピカルフルーツのアロマがあふれだす。口に含んだ瞬間、ほのかなモルトの甘みとみかんの白皮のような渋み。手のひらで雪が溶けるように、苦味と酸味の余韻はいさぎよく消えていく。

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宮原とも子

この記事を書いたひと

宮原とも子

ビアジャーナリスト/ビアライター

1979年、愛知県の自然豊かな山あいの里に生まれる。大学進学をきっかけに京都で十数年を過ごしたのち、UKロックとウイスキー好きが高じてイギリスへ。1年間の遊学中にイングリッシュ・エールとパブ文化の虜となる。帰国後、出産を機にフリーライターとなり、お酒、旅行、ビジネスコンテンツなどをウェブメディア等で執筆中。ビールを介して出会う人、場所、物語を通じて、「ビールは楽しい」を伝えていけたらと思っています。

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