[コラム,ビアバー]2020.11.30

ビアバーの危機、再び

東京都は酒類を提供する飲食店に対して、11月28日から12月17日の20日間、都内全域(島しょ部を除く)を対象に、営業時間の短縮(夜は22時まで)を求めた。言うまでもなく、新型コロナウイルス「第3波」の感染防止策である。

このような飲食店に対する要請は、春の「第1波」、夏の「第2波」に続いて3回目であるが、今回は様相が全く異なると考える。なぜなら、年末は飲食店にとって最大の繁忙期であるからだ。

そもそも居酒屋など夜に酒類を提供する飲食店は、曜日や季節による繁閑の差が非常に大きい業態である。週単位では週末に大きく稼ぐことで一週間の売上を確保し、年単位では年末に大きく稼ぐことで年間の資金繰りを計算しているのが一般的だ。

「第1波」の時は来客数前年比で10%を切る壊滅的な状態だったが、この1~2か月を乗り切ればと、経営者は金銭的にも精神的にも我慢ができたかもしれない。その後の回復途上に「第2波」が来たが、来客数前年比50%前後で推移しながら大きく落ち込むことは無かった。8月は居酒屋にとっては閑散期でもあり、さらなる売り上げの回復を望む余力もまだ残っていたように思う。

10月に入り来客数前年比で80%程度まで回復、GoToEatキャンペーンも始まり、年末に向けてやっと本来の売上へ回復する期待が高まったところでの「第3波」である。

(数値は朝日新聞2020年11月29日付朝刊13版32面「飲食業界 客足どこまで回復?」のグラフ「全国の飲食店の来店客数」より)

飲食店経営者が今年の12月の売り上げを見込む際に、会社の忘年会などの大きな宴会需要は全く期待できないことは早くから予測していたであろう。その穴を小グループや個人利用での来店でどれだけ埋められるかに気を揉んでいたはずだ。

そこへ今回の事態である。営業時間の短縮による売り上げの減少と同時に、外食の自粛ムードで客足が遠のいてしまうことによるダメージも大きいのではないか。万策尽きて年を越すことができない店が多く出てくるのではないかと危惧している。

そこで今回も私たちにできることは非常に単純である。とにかく店に通い続けることである。

何も売り上げに協力しようと気合を入れて大人数で行く必要はない。ひとりでもいい。ふらっと空いた時間に立ち寄って、カウンターの隅に座って、並んだタップでも眺めながらゆっくり飲もう。店の人がヒマなら話し相手になってくれるだろうし、忙しそうならそれはそれで店には結構なことだ。

知人と予定が合えば二人でゆっくり今年の苦労を語り合うプチ忘年会だ。カウンターで並んで座れば話し声も小さくて済むので、感染拡大の心配もしなくていいだろう。時を忘れて語り合ったとしても飲み過ぎや終電の心配は不要。22時には追い出されるのだ。また別の日に続きをやればいい。

まだまだ先行き不透明なコロナ禍である。世の中がどうなろうと、ビアバーで飲む美味しいビールは私たちの心の支えである。明日も、来週も、そして来年以降もお気に入りの店で美味しいビールが飲めるためには、今夜の一杯が何よりも大切なのである。

 

 

 

ビアバー新型コロナウイルス飲食店応援飲食店支援

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

津田 敏秀

ビアジャーナリスト

1972年、東京都出身。獨協大学外国語学部ドイツ語学科卒業。
外食チェーン企業に15年間勤務の後、独立。串揚げとクラフトビールの店を7年間経営。今までの経験を活かし、飲食店の経営に関する記事を得意とする。
好きなビールはスタウト。趣味は乗り鉄。

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