[コラム]2023.11.28

晩秋の高原列車とビールのペアリングを楽しむ!

HIGHRAIL1375

JR東日本は「のってたのしい列車」と称して、移動するためだけではなく、乗って楽しむことを目的とした列車を数多く走らせているが、そのうちの一つが「HIGHRAIL1375」である。その名の由来は走る路線にある。この列車の走る小海線は、JR線の中でも最も標高の高い場所を走る路線であり、その最高地点は海抜1375メートルとなっている。山梨県の小淵沢駅から長野県の小諸駅まで約2時間、晩秋の高原列車の旅を、地元のビールと秋の味覚で楽しんできた。

 10:10 発車前

HIGHRAIL1375

旅の始まりは小淵沢駅。新宿駅から特急あずさ号で約2時間。新しいスタイリッシュな駅舎が青空を背景に存在感を示している。乗り継ぎの時間で途中下車して、駅舎の1階にある店舗で買い出しである。

HIGHRAIL1375

「MASAICHI」というこの店舗、地元の駅弁の老舗である「丸政」が運営する土産物店である。地元の名産品、駅弁、飲み物、酒類など、品揃えが豊富だ。旅の始まりにテンションが上がって、買い過ぎてしまわないように注意が必要である。

ホームに向かうと、すでに列車は止まっていた。車体の横に描かれたエンブレムが誇らしげだ。沿線の名峰である八ヶ岳と星空がモチーフになっている。わずか2両の短い編成の列車だが、なかなかの存在感を示している。

HIGHRAIL1375

さっそく車内へ。今回の席は1号車5番D席。一人がけのリクライニングシートが窓に向かって45度の角度で固定されている。そしてテーブルが前と横に2カ所。贅沢そのものである。ちなみに、この他にも2人用、4人用など、様々なタイプのシートがある。

HIGHRAIL1375

車内を一通り探検してみると、こんな場所があった。なんと、小さなプラネタリウムである。実はこの列車は、今回乗車する午前中の便の他に、夜に走る便もある。夜の列車は途中駅で長時間停車し、外に出て実際の星空を楽しむこともできるのだ。ぜひ次は夜の便に乗ってみたいものである。

HIGHRAIL1375

車内専用のWi-Fiに接続すると、この列車に関する様々な情報を入手できる。車窓を楽しみながら沿線の情報などもチェックできるわけだ。乗車時間中は飽きることがなさそうだ。

HIGHRAIL1375

列車の最後部には売店もあり、飲み物やおつまみなど多く取り揃えてある。もし時間が無くて手ぶらで乗ったとしても、車内での飲食の心配は無さそうだ。

 10:40 小淵沢駅発車

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列車は定刻に小淵沢駅を発車。さっそく車窓には素晴らしい景色が。カーブしながら高い築堤を走る列車からは南アルプスの山々を一望できる。紅葉に染まる木々と、常緑樹のコントラストが美しい。

HIGHRAIL1375

さっそく、花より団子、もとい、紅葉より弁当。さきほど買ったビールと駅弁はこちら。丸政の秋季限定の「松茸弁当」と、「八ヶ岳ビール タッチダウン デュンケル」である。秋の味覚に合わせて、紅葉の色のビールを選んでみた。

HIGHRAIL1375

小淵沢駅の標高は886メートル、そこから列車はぐんぐんと高度を上げて、すでに1000メートルを超えていると思われる。すでに葉を落とした木々を車窓に眺めながら飲む地元産のデュンケル。車窓とビールの最高のペアリングである。

 11:07 清里駅

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最初の停車駅は清里駅。言わずと知れた避暑地の名所である。小海線の駅名標には山と星空が背景に描かれていて、列車旅の雰囲気を盛り上げてくれる。

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清里駅を発車してしばらくすると、左側にポールが見える。ここが、この列車の名前の由来にもなっている、JR線の最高地点である標高1375メートルの場所だ。車内のアテンダントの方が放送で事前に案内してくれるので、見逃す手はない。

 11:22 野辺山駅

そこから少し進むと野辺山駅に停車。JR線の駅として標高が最も高いのがここで、標高1345メートル。先ほどの最高地点付近で山梨県から長野県へ入っている。ここから終点の小諸まで、千曲川に沿ってほぼ下り坂である。

 12:09 小海駅付近

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ところで、日本一長い河川と言えば信濃川と覚えている方は多いだろう。そして長野県内を流れる千曲川という名前も有名である。実は、この2つの川は同じ川だということは、どれほど知られているだろうか。長野県内では千回も曲がるから千曲川、県境を越えて新潟県に入ると、長野県の旧国名である信濃の国から流れてきた川ということで信濃川と呼ばれているのである。いま列車が走るこのあたりは、千曲川の源流に程近い上流部。このはるか先で信濃川と名前を変えて日本海へと注ぐのである。

もう一つ、沿線に関する豆知識を。小海という地名の由来は、遠い昔に八ヶ岳で起きた爆発の影響で川がせき止められ、湖ができた時に、それを「小さな海」として小海と名付けたとのこと。海から遠く離れた場所に「海」の字が使われるのも、面白いものだ。

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美味しい弁当とビールでお腹も満足したが、やはりビール飲みの性、1本では物足りない。車内の売店へと足を運び、「THE軽井沢ビール プレミアム・クリア」を入手。澄んだ空に輝く黄金色のピルスナーは美しい。この列車の終点の小諸と軽井沢はすぐ近く。列車とビールのペアリング大成功である。

HIGHRAIL1375

長時間席に座っていると、少し体を動かしたくなってくる。ちょうどそんな気分になった頃に、「ただいまの時間、車両の先頭から、前面展望をお楽しみ頂けます」との案内放送が。さっそく行ってみると、普段は入れない運転台の真横が開放されていて、迫力の景色を楽しむことができた。鉄道ファンならずとも、嬉しいサービスである。

 12:43 佐久平駅

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旅は終盤に差し掛かり、列車は最後の途中停車駅、佐久平駅に到着。北陸新幹線との接続駅だ。ここから東京までは新幹線で約1時間半、降りる人も多い。一般的に新幹線と在来線が交わる場所は、地上を走る在来線を新幹線が高架で跨ぐケースが多いのだが、この駅は北陸新幹線が下で、我が小海線が上を走る、非常に珍しい構造だ。優雅な列車の中から新幹線の線路を見下ろすだけで、わけもなく優越感に浸る。

 12:56 小諸駅到着

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列車は終点の小諸駅に到着。この場所の標高は663メートル。1300メートル越えの場所からだいぶ降りたとは言え、634メートルの東京スカイツリーよりもまだ高い場所だ。

のどかな車窓、美味しいビール、季節の味覚の弁当で大満足だが、まだ昼である。1日を得した気分だ。とりあえず駅の待合室で休憩しながら、この先の行程を考えよう。もちろん目当ては、たくさんある長野県の美味しいビールの数々である。

JR東日本 のってたのしい列車 HIGHRAIL1375
https://www.jreast.co.jp/railway/joyful/highrail1375.html

(取材2023年11月24日 写真は全て筆者撮影)

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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

津田 敏秀

ビアジャーナリスト

1972年、東京都出身。獨協大学外国語学部ドイツ語学科卒業。
外食チェーン企業に15年間勤務の後、独立。串揚げとクラフトビールの店を7年間経営。今までの経験を活かし、飲食店の経営に関する記事を得意とする。
好きなビールはスタウト。趣味は乗り鉄。

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