一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会

コラム

【データで読むビール③】どうなる2026年度のビール業界 クラフトビールはブーム終焉か!?

2026年度が始まりました。ビール業界にとって、今年度はどんな年になるのか?それを占うため、過去20年あまりのデータを分析しました。
調べたのは↓↓こちらのテーマ↓↓

クラフトビール(地ビール)の人気度

今回、分析に使ったのはGoogleトレンド。何かを検索する=関心の表れとみなして、検索された言葉の人気度を示してくれるツールです。

まず、去年で誕生から30年となった『地ビール』が、これまでどう検索されてきたかを見ます。

縦軸が検索量をもとにした人気度。横軸はデータがある2004年以降の年月です。青い線の『地ビール』は毎年、春から夏に上がり、冬に下がっています。これは冷たい飲料によくある傾向。そして20年あまりで、右肩下がりになっているのが分かります。

続いて地ビールのグラフに、現在使われる『クラフトビール』という言葉を重ねてみます。

赤い線が『クラフトビール』です。2009年ごろから検索されはじめ、2014年8月に『地ビール』を追い抜きます。その後、季節によるアップダウンを繰り返しながら2023年7月に最高値に到達。しかし、それ以降は急落しています。なぜなのでしょうか?

考えられる要因は3つあります。1つ目は「暑さ」。2023〜2025年にかけて毎年、夏の平均気温が過去最高を更新しました。2023年は暑くても、新型コロナによる外出制限から解き放たれたこともあり、店舗やイベントで飲むための検索が増えています。

しかしその後も年々暑さが増す中で、“飲食店は猛暑日に客足が鈍る”と言われるように、外で飲むための検索が減っていった可能性があります。
代わりに家で飲む人もいるので、それは説明できませんが…

下落の要因、2つ目は「言葉としての浸透」です。こちらはクラフトビールと検索した人が他に調べた『上位の語句』ランキングです。

2024年度、赤枠で囲んだ『クラフトビールとは』『クラフトとは』の検索は、それぞれ50%減少しています。そして…

2025年度は、さらに20~30%減りました。意味を調べる人が減ったのは関心の低下とも言えますし、一般的な言葉として浸透してきたという解釈もできます。

3つ目は、クラフトビールに関連する言葉が「バズらなかった(爆発的に伸びなかった)」こと。それを示すのが『増加傾向の語句』です。

上図の赤枠で囲んだ語句の「変化率」を見てください。2024年度は、検索が5,000%以上アップしたことを示す急上昇の語句が2つあります。

しかし、下図の2025年度ランキングには1つもありません。

ここまで低い変化率はコロナ禍でも見られなかった数値で、クラフトビールの関連ワードが全体的に検索量を減らしたことを表しています。

これら3つの要因を踏まえると、Google検索が示す『クラフトビール』の人気度は2023年がピークで元には戻らないだろうと感じます。
「一過性のブームは終わった」という肌感覚はありましたが、それがデータで裏打ちされました。

クラフトビールが注目を集めるには

では、どうすればクラフトビールへの関心を高められるのでしょうか?多くのブルワリーや店舗は、商品やイベントをアピールするためSNSで発信を行っています。
しかし5年間ほぼ毎日、InstagramとXにビールの投稿をしてきた筆者は「ある変化」を感じています。

こちらは、筆者が大好きな長濱浪漫ビールのIPAをInstagramに投稿した画像。同じビールでも、赤い線を引いた「いいね」の数を左から見ていくと、年々減っているのが分かります。
フォロワーは増え続けて6,600を超えましたが、ビールの投稿への「いいね」は減っているのです。

そんな中、クラフトビールの検索が増えているプラットフォームを見つけました!

こちらはYouTubeで『クラフトビール』の動画が検索された人気度です。2017年ごろから増え始め、2023年5月にピークに到達。その後アップダウンを繰り返しながらも、大きくは下げていません。

YouTubeより(人気度順で検索した結果)

人気の動画を見てみると、上位4つは「ショート」という1分以内の縦型動画。横向きの動画と比べると、桁違いの視聴数でした。

なおYouTubeではクラフトビールという検索が過去3年、決まって5月に伸びていました。
理由は分かりませんでしたが、ショート動画を始めるなら「今がチャンス」と言えます。

ちなみにYouTubeで発信しているブルワリーや店舗は少なく、目立ったのはUCHU BREWINGの「宇宙TV」でした。

YouTubeより(画像クリックで宇宙TVに遷移します)

宇宙TVでも、視聴数が多いのはショート動画。UCHUの隊長こと楠瀬正紘さんがおつまみの作り方を紹介するもので、ビールも映りますが銘柄には言及されない“脇役”のような扱い。
ビールマニア向けではない内容が、幅広い層にリーチするコツなのかもしれません。

ビールの人気度 20年あまりを振り返る

再びGoogleトレンドを使って、今度はクラフトが付かない『ビール』の検索動向を見ていきます。データがある2004年からの人気度の推移がこちら。

『ビール』も季節によるアップダウンを繰り返し、2023年7月にピークに到達。その翌年は下落したものの、クラフトビールと違うのは2025年に回復したこと。
去年も猛暑で、かつビール離れが進んでいる中で何があったのでしょうか?

答えはこちら。2025年度にビールと検索した人が『他に調べた語句』のうち、5,000%以上の急上昇をした言葉の一覧です。

昨年度の検索を押し上げたのは、9月の「アサヒグループHDへのサイバー攻撃」と「オリオンビールの株式上場」でした。
では、この2つのトピックはビール業界にとってどれほど大きかったのか?アサヒとオリオンに、サッポロとキリンも加えた『社名』の検索動向を比較してみます。
※サントリーはウイスキーなどビール以外の検索も多いため割愛

赤い線のアサヒビールは、過去20年あまりにわたって上位をキープ。時折、緑のキリンビールに抜かれても首位に返り咲いてきました。そしてグラフの右端、2025年の9〜10月にアサヒビールと青線のオリオンビールは過去最高値を記録。
やはり「サイバー攻撃」と「株式上場」が、かつてないほど注目を浴びたことが分かります。

なお、赤い線のアサヒビールは2021年4月にも人気度が急増しています。何があったか覚えてますか?

スーパードライのフタが全開する「生ジョッキ缶」が発売された月です。

この缶は2021年4月6日に発売され、あまりの人気ぶりで2日後に出荷停止。2週間後には、製造が追いつかず一時休売が発表されました。そのため多くの人が検索したのです。

筆者は同じフルオープン缶でも「アサヒ食彩」が、ホップの華やかで青草を思わせる香味があって好きです。
グラスに注がなくてもきめ細やかな泡が立っておいしいので、ピクニックやキャンプなど外で飲むことが増えるこれからの季節にオススメです!

2025年度 人気だった銘柄は?

本題に戻ります。先ほどの『社名』の検索は投資目的も多かったので、純粋にビールのトレンドを探ります。見ていくのは、2025年度の大手4社の『代表的な銘柄』の人気度です。
※オリオン ザ・ドラフトは検索量が比較的少ないため割愛

赤い線の『スーパードライ』が一年を通して上位。そこに緑の『一番搾り』黄色の『黒ラベル』が一時的に食い込んでいます。それぞれ何があったかというと…まず去年の4月第3週は「キリン一番搾りホワイトビール」が発売された週です。

写真は、発売直後にオリジナルの一番搾りと飲み比べた時のもの。どこかオリジナルに似た感じがあるものの、ホワイトビールは苦みや麦芽のコクが控えめで、ほんのりスパイスっぽい香味もありました。
スッキリしていて控えめな苦味を好む方は、ホワイトビールがオススメです。

そして人気度グラフで、9月第2週にスーパードライを『黒ラベル』が一時的に抜いた要因は…

小説家の川上未映子さんが新CMに登場したためでした。5,000%超の急上昇ワードにCM関連が4つ入り、川上さんを知らない人が「あの女性は誰?」と調べる形でも注目を集めたようです。

今年度 注目の検索ワード!

最後に2026年度、間違いなく検索が増える言葉を見ていきます。10月に改正の最終段階を迎える『酒税』です。

酒税法改正は2017年から始まり、ビール系飲料の税率は2020年、2023年と段階的に変更。そのたびに青線の『酒税』の検索も急増してきました。

下図のように法改正で「ビール」は減税になります。

しかし「第三のビール(新ジャンル)」の税率は2020年と2023年に上がり、発泡酒と同じになりました。
発泡酒(麦芽比率25%未満)」はこれまで据え置きでしたが、今年10月に増税されます。

そこで酒税のグラフに、増税の対象である『第三のビール』『発泡酒』を重ねてみます。すると見事に三者がシンクロして急騰していました。

注目してほしいのは、その後。

2023年の税率変更の後、赤い線の『第三のビール』が以前より低く推移するように。これは、安い税額のメリットを失ったためでしょう。
同じように今年、「発泡酒」の税率が上がると人気は下がることが予想できます。

逆に、税金が安くなって注目度が高まるのは「ビール」です。

ビールに格上げされる発泡酒・第三のビール

それを見据えて大手ビール会社は、複数の発泡酒や第三のビールの麦芽比率を変更して「ビール化する」と発表しています。

2026年度、ビールのラインナップ強化によって競争は激化するとみられます。そんな中で生まれる新たなビールや、これまでなかった売り方などに期待しながら、今後も業界の動向を分析していきます!


データで読むビール、いかがでしたか?「自分が好きなビールや醸造所の人気度も知りたい」と思ったあなた、ぜひGoogleトレンドで調べてみてください。
データを読んでビール飲めば新しい世界が開けることでしょう。

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※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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Joe Beerski (ジョー•ビアスキー)

ビアジャーナリスト/ビアスタグラマー

年間1000銘柄を超えるビールを飲んでInstagramとXに投稿。より広くコンテンツを発信しようとビアジャーナリストになりました。

いま人気のクラフトビールが「ブーム」ではなく「文化」として定着してほしい!そんな願いを込めて、国内外のビール・醸造所・ビアバー・イベント etc. の記事を書いていきます。

◆ビア検1級合格 / 2級満点 /3級満点 (2年連続)
◆ベルギービールアドバイザー
◆東京ビアカレッジ修了(マスタービアアフィショナード)