[コラム,テイスティング,ビアバー]2016.11.16

【第1部】『 Highbury 』が持つ魅力とは何なのか?- Pub Culture ・ Nostalgie Tap ・ Plzeňský Prazdroj 編-

「ビールは醸造場の煙突が見えるところで飲め」

1876年、パスツールの低温殺菌法がビールに応用できると発表されるまで、こんなドイツの古諺があった。それほどに、ビールは繊細な飲み物である。

現在でさえ、そのビールが本来持つおいしさを引き出すために、造り手やインポーター、それを提供する側が細心の注意を払うことで、私たちの喉元を唸らせてくれている。

今回ご紹介するビアパプも、まさに煙突が見えるところで飲んでいると思わせるかのごとく、技巧と情熱を込めて「至高の麦のお酒」と「空間」を提供している。

『Highbury -The Home of Beer-』(以下、ハイバリー)。
安藤 耕平(あんどう こうへい) ・ 榮川 貴之(えいかわ たかゆき)の両氏が手がける英国パブだ。

安藤 耕平氏(左)と榮川 貴之氏(右)【同店Facebookより転載】

開店してから2か月余りだが、ビアギークの間でも話題になっている同店。
その魅力は何なのか?安藤氏にお伺いしてみた。

■店主らの想い溢れる店内に心満たされる

東京メトロ丸の内線・新宿御苑前駅から歩いて数分。路地に入ると、異国情緒あふれるその店舗が姿をあらわす。一見華やかな風貌だが、門をくぐるとシックな基調の店内が目前に広がり、どこか懐かしささえ感じさせる。

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店内の様子。木を基調とした落ち着きある面持ちだ。

「自分達の体験した、現地英国のパブ文化を体現したかったんです」

そのパッションは、店内の雰囲気作りにでさえ余念がない。例えば、バーカウンター。安藤氏がイギリスへの留学時代に感銘を受けた「THE WHITE HORSE(ホワイトホース)」というパブのものと全く同じ寸法で作られている。

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安藤氏が実際に計測した際のメモ。

 

「THE WHITE HORSE」のカウンター(左)と、実際のHighburyのもの(右)。縦の寸法が一緒に作られている。

「ホワイトホースの、【そこに人が来るからビールが必要】という空気が好きだったんです。ここでも来る人にとって【ホーム】となるような空気を作りたいなと。」

ぜひ、グラスを傾けながら伺ってみるといい。外観のロゴ・壁掛けの写真…すべてに思い入れが詰まっていて、聞くほどに共に日々を歩んできたような気分にひたされる。
プロ選手のサポーターのごとく、このあふれる思想に多くの人が引き込まれていくのだろう。

■最高のものを最高のものとして提供するこだわりのために

店内でもひときわ目を引くのが、この「ノスタルジータップ」だろう。最高のラガービールを注ぐために、本場チェコの職人にお願いした特注品だ。

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LUKR社(チェコ・ピルゼン)製の特注ノスタルジータップ。「送料がもったいないから」と、安藤氏自ら現地に受け取りに行ったというウラ話も。

「このタップの良いところは流量を0→100の間で調整できるところ。加えて、ホース径も9.5mmと通常の8mmより太くしています。」

それは何故なのか?

「強い流量で液を流すことで、グラスの底から上がってくる対流を作ります。それによって持ち上がる泡をヘッドに持ってきつつ、その対流の勢いで余分なカーボネーションを抜いているんです。実は注ぎ口にはフィルターも内蔵されていて、それでいてきめ細かい泡を作っています。」

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ノズル先端にはメッシュのフィルターが内蔵されている。クリーミーな泡を形成するのに一役買っている。

これが極上のラガーを注ぐために考案された方程式だ。

そうして注いでいただいた一杯目。
すべてのラガービールの原点ともいうべき「 Plzeňský Prazdroj (ピルゼンスキー・プラズドロイ)」である。

「ピルスナーウルケル」と聞けばお分かりになる方も多いだろう。しかし、「本物」のウルケルに敬意を称して、ここではその名で提供されている。現地から空輸で仕入れ、店舗で24時間以上しっかり休ませてからつながれる。

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「 Plzeňský Prazdroj (ピルゼンスキー・プラズドロイ)(ABV 4.4%)」。真っ白な泡と黄金色に輝く液体。注ぎ切った安藤氏も満足そうな笑みを浮かべる。

そのビールは、たしかに「プラズドロイ」であった。
鼻に近づけると上品なノーブルホップの香り。口に入れれば麦の焙煎香が広がり、トーストを噛みしめたような香ばしくも甘い麦の旨味を追いかけるように、ホップの苦味とフレイバーが舌に存在を訴えかけてくる。水のように抵抗なく、それでいて深い味わいやコクが引き出されているのは、このただならぬこだわりがあってこそだ。

「すでにある最高峰のビールを最高の状態で提供する。そうでなければここまでこだわった意味がありません。」

流量が多い分、注ぐのは一瞬の勝負。両氏ともに真剣なまなざしが印象的であった。

彼らが注ぐ際の表情も、さながら競技に挑むスポーツ選手のようだ。はじめは2回に1回は注ぐのに失敗していたという。それでも原価も二の次にして完成品を提供し続けていた。
その本気の1杯の美味しさを知れば、リピートせずにはいられないのだ。

【Next …】
【第2部】『 Highbury 』が持つ魅力とは何なのか?- Thornbridge ・ Fashion ・ YEBISU 編-(11/20更新予定)
https://www.jbja.jp/archives/14487

highburyNostalgie TapPlzeňský Prazdrojパブ

※記事に掲載されている内容は取材当時の最新情報です。情報は取材先の都合で、予告なしに変更される場合がありますのでくれぐれも最新情報をご確認いただきますようお願い申し上げます。

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この記事を書いたひと

くっくショーヘイ(佐藤 翔平)

フードペアリング インストラクター

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1989年、宮城県出身。岩手大学卒業。
「酸っぱいビール」に衝撃を受け、5000種以上のビールをティスティング。15以上の酒類資格と調理経験を活かし、フードペアリングに関する執筆や「ビアジャーナリストアカデミー」「アカデミー・デュ・ヴァン」「朝日カルチャーセンター」等の講師を務める。
日本地ビール協会公認「シニア・ビアジャッジ」として国際ビアコンペでの審査も行う。

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■執筆・監修■
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・ビール王国(ワイン王国)
・日経プラス1 (日本経済新聞社/日経BP社)
週刊現代 / マネー現代(講談社)
・Get Navi  (学研プラス)
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■ラジオ■
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